この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第31巻収録。西側の機関が違法毒物を製造し、CIAとKGBに大量に納品していた事実をアメリカ議会がスッパ抜き、CIAが窮地に立たされた。CIAは証拠を握られる前に毒物の製造工場を一掃する計画を立案し、その遂行にゴルゴを指名。しかしKGBも同じ目的で工作員を派遣。現場でゴルゴと鉢合わせすることになる……。脚本:外浦吾郎
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倫理なき科学者の罪と罰
千利休の妻、りくは大変な美女で、利休亡き後わがものにしようとしたが拒否された石田三成が、何百匹も蛇がいる部屋に彼女を閉じこめた、というおぞましく身の毛もよだつような話を思い出す。この話の真偽が微妙であるように本作もあくまでフィクションである。
しかしそれでありながら妙に信憑性を感じさせるのが怖い。科学者というのは好奇心が赴くままに研究し、新たな発見に喜びを感じるのだろうが、その発見が人類を含む自然界に及ぼす悪影響を考えない「オタク」か金の亡者であるならば、罪深い彼らは罰を与えられても仕方ないだろう。
追いつ追われつ、2人のプロフェッショナル
最大のみどころは、もう一人同じミッションを請け負ったプロの存在である。今回は狙撃のターゲットを探り当てることも仕事に含まれるが、そのアプローチの方法が自分とすべて重なることから、かなりの凄腕であることをゴルゴは推測する。
特に連絡係のムルザングを訪れた際、番犬の急所を一撃で打ち抜きながらムルザングは拘束しているだけで殺していない。誰かが訪ねてきたとき、死体が転がっていたら事件になるが、生かしておけば、後ろ暗いことをしているのだから警察に届けられる心配はない。どの分野でもプロの仕事には無駄も隙もない。
落日の死影を踏んだのはどちらか
最後に互いを撃ち合わなければならなくなったのもプロの宿命なのだろう。勝負の分かれ道は「銃では互角だったぜ」の言葉が示している。ナイフが刺さっている旧日本兵の髑髏を見て、相手は「りっぱな死に様だぜ・・・くだらねえ感傷ってやつかな」と感傷に浸るのに対し、ゴルゴは単なる「物体」として認識している。
銃において相手の力量を認めればこそ、それ以外の武器を計算に入れていたゴルゴが紙一重勝っていた。しかし『鬼畜の宴』のスパルタカスと並び、名前も知らないこのスナイパーも、ゴルゴの脳裏に深く刻まれたことだろう。
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野原 圭
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