この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第57巻収録。戦後最大の謎の人物とされるユダヤ人武器商人・マインベルグ。彼の過去を洗う新聞記者・村本は、元海軍大佐から戦時中に行われたユダヤ人移住計画「河豚計画」について聞かされる。そこにはユダヤ人を襲った過酷な歴史と、一人の少年の物語が隠されていた……。ゴルゴにユダヤ人の血が流れていたという仮説で迫る圧倒の160ページ。脚本:きむらはじめ
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本当にあったフグ計画
本作に登場する「フグ計画」。その細部はともかく、ヨーロッパでナチスドイツに迫害されたユダヤ人を満州国に集団移住させて自治国を造ろうとする計画は本当にあったそうだ。
さらに歴史の推移は本作に書かれたのとほぼ同様で、ドイツとの同盟が深化して計画が破たんしつつあった時期には、「黄浦江の廃船に追い込み、東シナ海で砲撃、船もろとも沈めちまえば」なんて案もドイツから提案されたとのこと。「戦争は人間を狂わせる」のような言葉もあるが、そんな案に乗らなかった程度の正気は当時の日本政府や関係者にも残っていたようだ。

日本人とユダヤ人との関わり
『芹沢家殺人事件』『毛沢東の遺言』のように、目的としてゴルゴのルーツを探す話はいくつもあるが、本作では意図せずにゴルゴのルーツらしき動向をたどることになる。
そこで大きく関わってくるのが先の「フグ計画」であり、日本人とユダヤ人やイスラエルとの関わりだ。同時に本作ではリビアのカダフィ大佐が依頼人となり、キーマンであるユダヤ武器商人のマインベルグを暗殺するようゴルゴに依頼する。結果的にゴルゴにユダヤ人の血が流れているかどうかは分からないままだが、条件がそろいさえすれば仕事を受けるのはゴルゴの流儀だ。
アジアに築く王道楽土の夢
本作では黒洋社なる団体がちらっと口の端に上っている。もちろん実在する団体ではないだろう。しかし、おそらくモデルになったと思われるのが日本で初めて作られた右翼組織とも言われ、大アジア主義を掲げた玄洋社だ。
また、当初は軍人達と組んでユダヤ人を迫害したものの、戦争が激化するとユダヤ人であるマインベルグと組んで私腹を肥やし、さらに戦後はフィクサーとなって与党幹事長すら呼び出す丘珠なる老人も登場する。「日本も、アメリカ以上の武器輸出国にならねばならぬのだ」と言い張るこちらのモデルとなった人物はいるのだろうか。

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研 修治

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