この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第23巻収録。中東戦争での敗北を分析したアラブ諸国は、イスラエルの諜報能力にダメージを与えることが最優先だと判断。モサドのスパイ養成所を壊滅させる任務をゴルゴに託す。ユダヤ人になりすまし潜入したゴルゴだったが、ゴルゴを見て「只者ではない」と判断したシャレット大佐は、女性諜報員・ヨナを使って徹底マークする……。
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親子として、諜報員としての葛藤
非情なプロ根性を求める大佐と涙を流しながらもそれに応えるヨナ。さらに二人が実の親子ときては、感情が揺さぶられずにはいられない。親子として諜報員としての二人の葛藤は諜報の世界の厳しさを教えてくれるとともに、国を守るということの厳しい現実も見せてくれる。
今エピソードが描かれた頃のイスラエルは第3次まで数えた中東戦争すべてに勝利を収めていたものの、敵対国に囲まれ、大雑把に言うと10年ごとに戦争をしていた政情不安定な若い国であった。それらを背景に、国のためには親子の情愛すら二の次という愛国心、忠国心を美しく描く良作品だ。
不器用なヨナが切ない
可憐でどこか幸薄そうな容姿が男心をくすぐるヨナ。ところが任務となれば経験の浅い情事(ユダヤ教では婚前交渉が戒められているので、未経験の可能性大)においてもひるむことがない。諜報員として厳しく仕込まれたことが窺える。
もちろん、子としても大佐から厳しくしつけられたのであろう。だが大佐はヨナに女性としての幸せや幸せになる方法は教えなかったようだ。安息日にゴルゴを誘う時の不器用さ。そしてゴルゴが来ないとわかってはいるものの、いつまでも待ちぼうけの不器用さが涙を誘う。
5W1Hが気になる割礼痕手術
依頼を遂行するためには、生命を危険にさらすことも厭わないゴルゴ。『イリスク浮上せよ』では深海、『流星雨の彼方で』では宇宙空間、『白龍昇り立つ』では8千メートル級の冬山と過酷な条件をモノともしないタフネスさだ。
今エピソードには、生命の危機はないが仕事をするにあたって“割礼痕”をつけるという珍しい条件が付随してくる。“割礼痕”をつけるとは要するに包茎手術をした(もしくはその痕をつける)ということであるが、誰が執刀したのか、麻酔はどうしたのか、など5W1Hへの興味が尽きない。ゴルゴのことだから、自分で執刀したり、無麻酔での執刀も考えられる……のだが。
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片山 恵右
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