この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第145巻収録。仕事を完遂したものの追われる身となったゴルゴは、捜索を逃れるため山中に逃げ込む。が、突如発生した山火事に巻き込まれ過酷な山中サバイバルを強いられる。山中で出会った家出少年・ボビーに無言で「生きる術」を伝授するなど、ゴルゴの卓越したサバイバル技術が堪能できる一編。脚本:ながいみちのり
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なぜかボビー少年を助けたゴルゴ
“ゴルゴは子供にやさしい”はよく知られた都市伝説だ。本作でも山火事に囲まれたゴルゴが、居合わせた少年・ボビーを助けている。その理由は説明されないまま謎として残るのはシリーズの常だ。同じく火事をテーマにした『ファイアー・アフター』でも行きあった女性を避難同行して助けている。
その理由は明確にされていないが、狂言回しの刑事が推理していくなかでゴルゴの行動規範が明らかにされていく。なお火事ではなくヒマラヤの高地が舞台の『白龍昇り立つ』でも依頼者(ダライ・ラマ)から正式な依頼ではない“お願い”のために、パンチェン・ラマの生まれ変わりとされる少年・ラモンを救っている。

ごじらせ男子ボビー
前出の『白龍昇り立つ』でゴルゴに助けられた少年・ラモンは、すでに悟りを開いているかのような落ち着いた言動だ。周囲の大人が殺されても取り乱さず、自分に銃を向けられても先に死んだ大人に向かって静かに合掌している。死を恐れてもいない達観。
一方、本作で登場するボビーはラモンとは対極の存在だ。若くして最愛の母を亡くしたボビーに同情はするが、無理に酒を飲んだり、やけくそで自死を考えたり、言動が幼くて見てられない。裕福な家庭に生まれるのも考え物。こじらせ方が残念だ。ゴルゴとの邂逅で立派な大人への階段を登ってほしいものだ。
余韻の残るエピソード
ラストシーンでゴルゴのいない穴をボビーが見て、ゴルゴが山火事を乗り越えて脱出したことが表現される。余韻を十二分に味わえる描写がみどころだ。山火事が収まった後、二人で抱き合って生存を喜び合ったりしては様にならない。前掲の『ファイアー・アフター』でもラストに余韻を残す表現が取られている。
他にラストの余韻を味わえるおすすめエピソードに、ゴルゴがプロ意識を分かち合った老猟師を想いながらコーヒーを味わう『もう一人のプロフェッショナル』がある。このような描写を楽しみながらの読書も楽しいものである。
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片山 恵右

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