この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。新疆ウイグルで支配を強める軍閥の超。彼は危険な思想を持ち、有害ウイルスの研究開発をすすめ、すでにウイグル人を実験台とした人体実験も行っていた。一方、あるミッションで重傷を負ったゴルゴは、ウイルス研究の権威・テギン教授に命を救われる……。
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中共に忖度しないゴルゴシリーズ
2008年の夏季に続いて、2022年に冬季オリンピックを行った北京。平和の祭典であるはずのオリンピックが、チベットやウイグルなどを弾圧する中国共産党国家の元で開催すること自体、IOCが堕落した証拠だろう。
政治問題、国内問題との主張を受けて報道しない自由を発揮する日本メディアと異なり、ゴルゴシリースでは『6月3日の死』(1990年発表)、『白龍昇り立つ』(1996年発表)などでチベット、『ピンヘッド・シュート』(2002年発表)、『楼蘭・さまよえる死神』(2009年発表)などでウイグル問題に鋭く切り込んでいる。
命の恩人の願いをかなえるゴルゴ
負傷したゴルゴを救った医者に報いる本作。『冥王の密約』に登場するノイマン医師を思い出す人もいるはず。本作で恩人となるアリムド・テギン北京大学元教授は中国一とも呼ばれるウイルス学の権威だ。しかしウイグル人の彼は見せしめの意味で収容所に拘束されてしまう。
以前に彼の願いを聞いていたゴルゴは、道を踏み外して中共高官となった教え子の殺害と開発した悪性ウィルスの除去、そしてテギン教授の救出に動き出す。旅客機(ボーイング737-500か?)やデイブ特製のマシンガンまで用いているが、これまでの恩返し案件と同様に無報酬だろう。
残された希望と因縁
本作のラストシーンには“希望”のサブタイトルが付いている。収容所を脱出したテギン教授の手助けをしたのは、教授を鞭打ちながらもテギン教授の言葉に感銘を受けたウイグル人看守だ。直接ゴルゴが彼らを手助けした描写は無いものの、タイミング良く車が来たところから、脱出計画をゴルゴが立案した可能性は高い。
今後の彼らの活躍が希望となるはずだ。その一方でウイグル人を弾圧する中国共産党や軍閥は残っており、ゴルゴの活躍を認めつつも敵視する9局(中国共産党中央弁公庁警衛局)も健在だ。この因縁をゴルゴは振りほどけるだろうか。
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研 修治
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