この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第181巻収録。ウイグル人活動家のウルハムは、中国が極秘裏に核実験を行っていたことを証明する極秘文書を強奪。そのまま「死の砂漠」と呼ばれるタクラマカン砂漠へ姿を消す。文書奪還の命をうけた特別警備隊と、それを阻止する依頼を受けたゴルゴが「死の砂漠」で対峙する……。
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冒険家ヘディンが探検したウイグル
日本人には心理的にも少し距離のある中国北西部、ウイグル自治区での中国政府の悪行が描かれており、頭の中の断片的な情報や知識を整理することができる。楼蘭やタクラマカン砂漠と言えば、子供の頃に読んだ探検家ヘディンの伝記が思い起こされる。子供のころは知らなかったが、“新疆ウイグル自治区”と呼称されているのだ。
ちなみにウイグル自治区の冠称くらいでしか見ない“新疆”というのは、「新しい」「境=領地、領土」という意味であり、あくまで接収した中国側の失礼な呼び方だ。こういったところにも中華思想が色濃く滲んでいることがわかる。
建国15年での早期核実験
中華人民共和国建国の1949年からわずか15年の1964年10月16日に中国政府は、国家として初めての核実験をロプノールで行っている。これは当時の中国の国力や経済力からすると非常に早い段階での核実験と思われるが、広島・長崎に投下された原爆の威力を知った毛沢東が核保有・開発を強く推進したからと言われている。
今エピソードでゴルゴは死の灰の舞う楼蘭へ赴くが、『2万5千年の荒野』や『冥王の密約』でも放射能汚染に巻き込まれた経験がある。なお1964年10月16日、東京ではオリンピックの真っ最中であった。
この世のディストピア
今エピソードでは、ロプノールでの核実験がメインテーマに据えられているが、少数民族の漢化政策の一環としてウイグル自治区でも厳しい弾圧が行われていることも押さえておきたい。
首都に当たるウルムチでは監視カメラが20メートル毎に設置されていたり、100万人が再教育キャンプ(思想改造、改宗を目的)に収容されていると言われ、あるメディアには“この世のディストピア”とさえ表現されている。中国政府によるウイグル人への弾圧へ焦点を合わせた『ピンヘッド・シュート』も併せて読むことでそのあたりが複合的に見えてきて、ニュースを見聞する際の理解を助けてくれる。
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片山 恵右
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