この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第28巻収録。キッシンジャー国務長官の中東訪問を阻止するため、ゴルゴに連絡を入れる依頼人。しかしゴルゴと面会する直前にキッシンジャー派に殺害されてしまい、ゴルゴに渡すはずだった契約金も奪われてしまう。一方、依頼人に約束をすっぽかされたゴルゴは、ジムという少年と出会うが……。
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ゴルゴ節炸裂!
本作のみどころは全編通してのゴルゴ節である。一人で酒を飲んでいるところに思惑のある美女が言い寄ってくるのは『三匹の女豹』でも見られる様式美と言えよう。
冒頭でゴルゴと揉めた非行少年ギャングのリーダー格・トニーを眼光で思いとどまらせるのは『黒い瞳』でも披露している。そのトニーのダーツが誤ってゴルゴに飛んで行った際も難なくキャッチし、ゴキブリに命中させて美女と去る。一挙手一投足に無駄がなく、その立ち振る舞いだけでお腹一杯になりそうだ。
さらに本作では少年ギャングのハブられ者・ジムには銃を向けられたにも関わらず、諭すような口調でゴルゴ節を語り聞かせるなどみどころ満載。ゴルゴの人物像を深く知りたい読者には必読の作品だろう。
臆病者ジム
本作でみどころとなる人物は非行少年ギャングのハブられ者・ジムだ。仲間の前でゴルゴをやっつけると大見得を切ったものの、震える手から殺意なしとゴルゴに判断されアドバイスを受ける始末。
このときの震えるジムの銃を見るゴルゴの表情が僅かだが穏やかなのも見逃せないポイントである。その一件でゴルゴに心酔し、子分になろうとする姿や彼の無実を晴らすために奮闘する等々、まさにスーパースターに憧れる少年そのものだ。
このようにジムとゴルゴのやりとりを微笑ましく感じながら、ジムが臆病者からどのように勇敢なる者へと成長するのかを読むのも、本作の楽しみ方のひとつである。
陰謀に巻き込まれるゴルゴ
本作の物語はキッシンジャー長官の暗殺を巡る謀略が渦巻く中、ゴルゴが巻き込まれる形で進んでいく。作中でもゴルゴの知らないところで話が進み、依頼金の話やら暗殺の話を聞かされ少々困惑するゴルゴが印象的だ。
ジムがゴルゴの無実を確信し安心するのも束の間、ジムを焚きつけた長官の暗殺を狙う男に銃を突きつけられるゴルゴ。憧れのスーパースターのピンチにジムが勇敢なる者となるシーンではゴルゴがジムに伝えた勇猛さを実証することになってしまうのもやるせない。
そのジムからの最初で最後の依頼を頼まれる場面では思わず目頭が熱くなること間違いなしだ。ラストでは依頼を果たしたゴルゴが空港で目を瞑り物言わぬ黙祷を捧げるかのようで切なさを残す名作となっている。
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小摩木 佑輔
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