この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第56巻収録。べトナム貧民有志たちは市民を見捨ててアメリカに逃亡した元ベトナム政府高官8人の暗殺を計画。その仕事をゴルゴに依頼することを決定する。一方、麻薬組織「潮州幇」は、その8人のなかに敵対する組織のボス、ゴー・クイの名を加えるよう画策する。脚本:岩沢克
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ベトナム人民の苦難の日々を今に伝える話
『英雄都市』のみどころ解説でも述べたように、掲載当時の世界情勢を今に伝える資料としても楽しめる『ゴルゴ13』。今回のエピソードでは、ベトナムからの亡命者「ボート・ピープル」の苦難が話の主題となっている。
本話が描かれた1982年といえば、まだベトナム戦争の終結から10年も経っていない。日本が繁栄を謳歌していた頃、アジアの国々には戦禍や貧困に苦しむ人々が多くいたという事実は、それから数十年を経た今の日本人も忘れてはならないことだ。『ゴルゴ』は読者に興奮のみならず、そうした歴史の教訓をも伝えてくれる。
長期連載とともに進化するゴルゴの万能性
本話では依頼人たちの連絡係である女性が、ショックで喋れなくなってしまうという出来事が物語のキーポイントになっている。終盤、ゴルゴは彼女の口の動きから発言したい内容を読み取る「読唇術」を披露する。これ以前のエピソード『行方不明のH氏』では、彼は読唇術を習得しておらず、依頼遂行のために読唇術のできる者を雇っていた。
ゴルゴの技量も日々進化しているということだが、よりメタ的な読み方をするなら、『行方不明のH氏』が描かれた時点ではさいとう先生もゴルゴの万能性をまだまだ甘めに設定していたということだろうか?
ゴルゴを悪用しようとした者達の非情な末路
元政府高官達への復讐のため、文字通り血の滲むような思いでゴルゴへの報酬をかき集めた「ボート・ピープル」達。ところが麻薬組織が彼らの計画にタダ乗りし、自分達の敵をゴルゴの標的リストに加えさせようとする。読者としてはこの悪どい連中が手痛いしっぺ返しを食らう結末を期待するところだ。
自身のルールを破った者には容赦なく制裁を加えるゴルゴだが、今回のように彼の存在を悪用しようとした者にも、当然ながら待っているのは非情な末路のみ。本話の結末は、まさに読者の期待を裏切らない「スカッとゴルゴ」と言ってよい。
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東郷 嘉博
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