この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第52巻収録。幼なじみの力士・荒海の応援にきた元盗賊の市兵衛。そんな市兵衛に畜生ばたらきをする盗賊“坂下の万平”が仕事をもちかける。万平は仕事を請けなければ、代わりに幼なじみの荒海を一味に引き込むと脅す。悩んだ市兵衛は旧友の彦十にすべてを打ち明けるが……。
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江戸時代の力士
本作は相撲の文化と力士の生活ぶりを知る事の出来る作品となっているぞ。相撲は江戸時代に興った物だが、やはり市民には刺激が強かったらしく、勝敗を巡っての傷害沙汰が絶えなかったとの話があるのだ。
要は観客同士が興奮して至る所で喧嘩があったという事だろう。江戸では非常に人気の高かった相撲ではあるが、一部の花形力士以外は生活に困る者も少なくなかったという。それ故にやくざ者に唆されて悪行を働いたり、あるいは喧嘩に駆り出されたりする者もいたらしいのだ。
江戸時代に星の売買が存在していたかについては言及を避けるが、本作に登場する力士も生活に困っている様子だ。現代でも出身地による力士の人気度が異なる事は周知の通りだが、伝統として同郷の力士を応援したくなる気持ちは今も昔も変わらないのかもしれないな。
乱舞する座布団
テレビで大相撲中継を見ていると、盛り上がりの取り組みにて横綱が金星を献上するなんて場面を目撃する事がある。その時に観客は熱狂状態になって土俵めがけて座布団を投げるのだが、ある意味でお約束ともなっている場面だな。
一説によるとこの座布団投げ、江戸時代までそのルーツを遡る事が出来るというのだ。番付に関わらない、現在でいうチャリティ相撲なども含めた見世物としての相撲興行は古くからあったのだが、ルーツはそこに至るぞ。同郷の力士や贔屓の力士が勝った際に、応援をしている民衆は自分の羽織や帽子などを土俵に投げ込んだのだ。
そして力士が退場した後に控室を訪問して、自分の持ち物と引き換えにご祝儀を渡していたという話だ。持ち物を土俵に投げ込む事から転じて、名勝負の後に座布団を投げ込むようになった、という説もある。やはり座布団投げにも歴史があるが故に、興行主もなかなか全面禁止と断ずる事が出来ないのかもしれないな。
両国と相撲
両国橋のたもとに回向院という寺があるのだが、この寺はもともと明暦の大火で亡くなった方を葬った事から始まる。その後も地震やその他死因による無縁仏も埋葬している。過去に小生の飼育していた犬も回向院に眠っているのだが、ただ近場の寺に放り込んだ訳ではなく、回向院にはきちんと犬猫供養塔と呼ばれる物があるのだ。
1768年に回向院の境内で相撲興行が始まり、1909年に両国国技館が建立するまでは回向院が相撲の聖地であったそうな。両国は江戸文化を多く残していると言われるが、相撲ひとつを取ってみても多くの歴史的な風景を眺める事が出来る場所なのだ。江戸東京博物館を見学してから回向院まで歩いて参拝するなんてのも面白い小旅行になるかもしれないな。
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滝田 莞爾
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