この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第38巻収録。元ナチスSSの暗殺教官に英才教育をうけた若き女殺し屋・クレメンタイン。彼女はアリゾナのバーで、ソ連のスパイだった大学教授を暗殺する。直後、同じく教授を追っていたFBIがバーに突入したが、クレメンタインは偶然バーにいた東洋人の男性客に殺人の罪をなすりつけるのだった……。脚本:外浦吾郎
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本話でも転がっている「西部劇のアレ」
本話のタイトルの「タンブル・ウィード」とは、枯れ草が球状になって風に吹かれて転がるものであり、「西部劇の荒野に転がっているアレ」と言えばピンと来る方も多いだろう。日本で目にすることはないが、アメリカなどでは時折大量に発生し、人々の生活や仕事に支障を来すこともあるという。
2016年のオーストラリアでは、大量のタンブルウィードによって複数の家が埋もれてしまうという出来事もあった。それにしても、タイトルの添え書きの「根なし草」とはゴルゴを指しているのか、それともクレメンタインとクルトのことなのだろうか……。

女殺し屋と義父の倒錯した関係が印象的
本話のキーパーソンとなる女殺し屋のクレメンタイン。義父のクルトとベッドを共にしているシーンでは、互いに「お義父さんはわたしのすべてよ」「おまえはわしのすべてだ」と言い合いながら交わる姿がかなり印象的で、倒錯した共依存関係がありありと伝わってくる。
しかし、あんな物々しい義手で愛撫されて痛くないのだろうか……。そんな二人の関係を知ってか知らずか、ゴルゴはクレメンタインを襲うふりをし、彼女の悲鳴でクルトをおびき出して始末している。ラストシーンで義父の義手を抱き、恍惚の表情を浮かべるクレメンタインが実に衝撃的だ。
どう転んでも依頼遂行に繋げるゴルゴ
今回のゴルゴの標的はクレメンタインの義父のクルトだった。偶然か必然か、クレメンタインによる別の暗殺の犯人として誤認逮捕されたゴルゴは、そのことを逆手に取り、目撃者を消そうとするクルトを病院に誘い出す……。
結果だけを見ると「都合よく事が運びすぎでは?」と思ってしまうが、そこはそれ、ゴルゴのことなので最初から場の流れに応じて臨機応変に作戦を立てるつもりでいたのだろう。結果、クレメンタインがゴルゴを嵌めようとしたことが皮肉にも義父の死を招いてしまったわけで、ゴルゴの前でヘタな策略は無駄だと思い知らされる。

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東郷 嘉博

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