この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第165巻収録。ロシアの新興財閥である「ユーリー社」の社長、ベリンスキーが逮捕された。容疑は汚職だったが、本当は反政府的な動きへの弾圧と、ユーリ社を直轄下のおくことで利権を漁るという政府の陰謀だった。ジャーナリストのイリーナは、腐敗した政府を糾弾するため立ち上がるが……。
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原油価格の低迷とロシアの経済
原油価格の低迷が続く現在、原油輸出で外貨を稼いでいたロシアの先行きも暗そうだ。そんなロシアでも本作が発表された2006年頃は勢いがあった。無論、原油価格が上がり続けていたからだ。同時に資本主義化が進んだことで“オリガルヒ”と呼ばれる新興財閥も勢力を伸ばしていた。
ただし、プーチン大統領の強権により本作で描かれているようなオルガリヒへの圧迫が行われたことで、半ば国策企業のようになってしまったのが現実。中国にしてもロシアにしても政情不安な国で経済活動を行うのはリスクが高いことをわきまえるべきだろう。
読唇術も堪能なゴルゴ
汚職や脱税の容疑で逮捕された石油会社社長のウラジミール・ベリンスキー。獄中にいる彼にゴルゴが世界的に高名な弁護士を装って面会に来る。ここで2人は依頼について話し合うのだが、そばにいる看守に聞かれないようにするため、読唇術を使って会話をしている。ベリンスキーがロシア人なのでおそらくロシア語だろう。
『300万通の絵葉書』などでゴルゴが複数の言語に堪能なのは知っているが、読み書きや会話だけだなく、読唇術もできるとはさすがだ。なお、読唇術のできるベリンスキー社長の経歴も気になるものの、残念ながら明かされていない。
最後に得をした人物は?
ベリンスキーの依頼によるロシア高官の暗殺は完遂したゴルゴ。しかし、依頼内容を確認する過程で出会った女性ジャーナリストの調査により、ベリンスキーの義弟であるグラズノフに不審な点が浮かび上がる。
グラズノフの電話内容をまたも読唇術で読み取ったゴルゴが「有罪(ギルティ)」と判断するのは、『13人目の陪審員』『ラスト・ループ』などでもおなじみの光景だ。結果としてグラズノフは眉間を撃ち抜かれて死亡。ベリンスキーも有罪に追い込まれるに違いない。結果的に漁夫の利を得たのはプーシコフ大統領(もちろんプーチン大統領のこと)か。
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研 修治
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