この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第162巻収録。南アフリカとナミビアとの国境近くにある傭兵養成所では、ロシア出身の鬼教官・セルゲイが、村人たちを猛特訓で鍛えていた。ある日、セルゲイに代わってゴルゴが教官として赴任する。傭兵として成功し、母親に楽をさせてやりたい少年リコは、ゴルゴを歓迎。はたしてゴルゴの目的とは……? 脚本:ながいみちのり
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アフリカの金の卵が生むものは
ゴルゴシリーズは、社会の負の側面を鋭くえぐり出している作品が多く、数多く登場する地域は、それだけ社会問題が根深く多岐にわたっているということであり、残念ながら名誉なことではない。本作はアフリカでの人間の収奪「傭兵」がテーマである。
アフリカでは、かつて奴隷制度の下、人身売買が公然と行われていた。セルゲイが「アフリカは傭兵という鶏を生む金の卵」と、たとえているが、あらゆる紛争の地で、大儀なく、金額の多寡で自分の命を売ることは、自らの意志であるとはいえ、奴隷制度とさして変わらないのではないだろうか。
ゴルゴは少年達の憧れの的
『熱砂の彼方に』などゴルゴに出会った少年は、その圧倒的な強さに皆一目で憧れてしまう。特に父親を失ったリコは、ゴルゴを父親代わりの存在に感じ「僕、これでいいんですよね」と自分の決心を支持してくれることを期待する言葉を求めている。
自分を傭兵として選んで欲しいというリコの願いをゴルゴは聞き入れるが、それは、このままこの地に留まっていてもセルゲイや仲間からはつまはじきにされるだけだから、リコが自ら人生を選択する余地を与えたのかもしれない。最後まで悩み抜いた末のリコの選択を、ゴルゴは真正面から受け止める。
ロシアンシャベル恐るべし
用心深い鉱山所長は、護衛にも武器の所持を認めていないが、もちろんゴルゴはこんな男を仕止めるのに武器など必要ない。しかし、ゴルゴの正体に気づいたセルゲイが拳銃を持って乗り込んできたときにはどうなるかと思ったが、対決は驚くほどあっけないものだった。
ロシア伝統の格闘技・サンボには、何とも変わった技があるものだと感心したが、これを練習しているところを想像するのは少々不気味ではある。リコの母親が不安げに立ちすくんでいるラストカットが何とも悲しい。アフリカでは当たり前のように人が死ぬ、という現実を語っている。
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野原 圭
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