この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第171巻収録。精密機械の不正輸出に関わった人間が不審な事故死を遂げた。調査に乗り出した新聞記者の高見は、一人の男に行き着く。その男の手がかりは、腕に彫ったさそりの刺青。彫り師に聞き込みをしたところ、高見の前にも刺青について調べていた謎の人物がいるという……。
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ゴルゴの作戦に利用されたことで命拾い
本話の主役といえるジャーナリストの高見は、親友の死の真相を暴くべく、正体不明のテロリストを追って単身敵地に飛び込む熱い男。偽りの取引で敵を欺こうとするものの、見破られ処刑寸前のところを、結果的にゴルゴに救われる形となる。
ゴルゴの存在を知って深入りする者は始末されるのが本作の常だが、彼の場合、知らぬ内にゴルゴの作戦に組み込まれていたのが幸いして、その「報酬」として見逃されることとなった。ラストでは「俺はジャーナリスト失格だ!」などと独りごちているが、引き際を察する臆病さこそが、彼の命を救ったのだろう。
影武者まで立てた用意周到なテロリスト
腕にサソリの刺青を彫った、ラジャブ・カリームなるテロリストの正体がカギとなる本話。一度はカリームと対峙したかに思われた高見だったが、彼が牢で一緒になったモリスと名乗る白人こそが、実は本物のカリームだったというどんでん返しは秀逸の一言。
一方で、倒した男の刺青が「はね彫り」ではないことや、自称モリスがアラブ系との混血であることを見抜き、その正体を瞬時に察するゴルゴの洞察力にも唸らされる。洞窟と地雷原で防御を固め、影武者まで立てて用意周到に警戒していたカリームだったが、所詮ゴルゴの敵ではなかったということだ。
こだわりの刺青が却って命取りに?
様々な業界のプロフェッショナルが顔を見せる『ゴルゴ13』だが、本話に登場するのは日本有数の彫師。カリームが権力の象徴を求めてサソリの刺青を入れたことは本人が語っているが、わざわざ日本の彫師を選んだ理由は謎である。侠客の刺青に憧れていたのだろうか。
だが、この刺青が彼の命取りとなった。ゴルゴが影武者を見抜くカギとなった「はね彫り」は、我が国の手彫り独自の技術。影武者のほうはより単純な彫り方をしていたのだろう。その僅かな違いを見分ける眼を持った刺客がやって来るなどとは、カリームの想定の範囲外だったろうが……。
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東郷 嘉博
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