この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第89巻収録。米政府が開発した人工知能「AI」がイラクの手に渡った。フセインはAIを戦略的に使用しクウェートへ侵攻。アラブ全面戦争勃発を阻止するため、作戦を遂行できる人物として米国のAIがはじき出したのは「ゴルゴ13」の名前だった……。脚本:熊坂俊太郎
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AIの進化をリアルタイムに反映した描写
タイトルの通り、人工知能(AI)を利用した陰謀が話の中心となる本話。発表は1990年であり、冒頭ではAIがチェスで人間を圧倒する描写がある。1987年の『メイティング・マテリアル』では、まだ短時間で人間に勝てるコンピュータはないと言われていたのに、僅か3年で凄まじい進歩ぶりだ。
それでもまだ、今見れば全体的に時代を感じるというか、SF漫画のコンピュータ観を引きずっている感は否めないが、30年前に早くもAIを取り上げていた先見の明には驚かされるばかり。常に時代の最先端の更に先を行くのが『ゴルゴ13』なのだ。

行動パターンを読まれたゴルゴの対応は……
湾岸戦争の引き金となったことで知られる1990年のクウェート侵攻。フセイン率いるイラク軍の電撃侵攻の裏に、最新の人工知能プログラムの存在があったというのが本作の骨子だ。
鉄壁のシェルターに守られた標的に対し、ゴルゴはその周囲の軍人達がイスラム教徒であることを利用し、礼拝のために天窓が開く瞬間を狙ってミサイルを撃ち込むという驚愕の手段で任務を遂げてみせる。コンピュータをも破壊する必要があったとはいえ、ミサイルとはゴルゴにしては大味な仕事。AIの裏をかくために、敢えて普段と異なる戦術を選択したのかもしれない。
完璧AIの計算外の隙を突く「ハメ手」
鉄壁の軍事設備に守られた標的を殺害するという今回の依頼。AIが出した成功確率は「0.001%」で、成功率99.9%以上を誇るゴルゴにとっても無理難題と言えるが、彼は先述の隙をついてそれを成し遂げる。
現実でも、人間のプロ棋士がまだAIと互角に戦えていた2015年には、棋士側がプログラムの特性を研究し、「ハメ手」でバグを誘発して勝利を収めるという一幕もあった(※)。ゴルゴがAIの性質をどの程度熟知していたかは分からないが、全ての状況を勘案してAIの計算外の一手を繰り出した彼こそ、AI以上のマシーンかもしれない。
※出典:ハフィントンポスト『「ハメ手」って何? 将棋・電王戦で21手でコンピューターが投了 人類が圧勝した理由とは』2015年4月11日

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東郷 嘉博

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