この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第164巻収録。マフィアのニコライは、弟をゴルゴに殺害された過去がある。報復のため凄腕の殺し屋・ミリアンを強奪し、仲間に加えたニコライ。そしてもう一人、ニコライがスカウトした男は、何の取り柄もない一般人男性・ミハエルだった。じつはミハエルの身体には特殊な秘密があり……。脚本:ながいみちのり
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ロシアンマフィアとビジネス
全ストーリーを通して様々な国の裏組織やマフィア、ギャングなどが登場するが、ONE SHOTに登場するのはロシアンマフィアだ。ロシアンマフィアが登場する『死臭の聖者』『砂上の帝国』などの作品を通じて感じられるのは、あくまで非合法活動はビジネスと割り切っている事だろうか。組織が母国ロシアにもたらす金銭の流れをしっかりと把握しており、ただの非合法な無頼者というイメージが薄い。
こうした国ごとの組織の特徴がしっかりと形づいている事もゴルゴ13シリーズの面白さである。憎しみや復讐が故に短絡的にゴルゴと敵対するのではなく、組織や母国にとっての利益となるべく思考を重ねての已む無き敵対といった描写も鋭く描かれている事もまた、ロシアンマフィアの特徴として挙げても良いのではないだろうか。
罠を仕掛けるストーリー
ゴルゴ13に正攻法で立ち向かった敵は、ほとんどの場合で返り討ちの結果となるが、本作の返り討ちに関しては興味深い描写がある。イワノフが手下と共にゴルゴに立ち向かうと宣言した次のシーンにはイワノフの墓が描かれており、どの様にして返り討ちされたかの描写が一切ないのだ。読者が想像できる事は一切の無駄を省く。描写すらしないという技法は、大胆かつ世界観が立っている証左ではなかろうか。
正攻法で倒す事が出来ない程の強敵と知っているが故に、多くの敵対者はゴルゴ13に対して巧妙な罠を仕掛けて来た。罠や策を用いるストーリーは初期作品から多く登場しており、『デロスの咆哮』『帝王の罠』などの名作はもちろんの事、2000年代には『生存確率0.13%』といった作品でも人気のある作風となっている。本作ではどのような妙策が用いられるのかも見所だ。
ONE SHOT(一発)の意味する物とは
タイトルになっているONE SHOTだが、敵対するヒットマンの流儀が“心臓に一発”を打ち込むという理由でストーリーは進んで行く。しかし、その“一発”は布石に過ぎない所がこの作品の面白さだろう。
相手の期待を裏切り、物語の全てを”一発”に帰結させるストーリー展開はスピード感もあり、まさにゴルゴ13の世界観にマッチしているぞ。ロシアンマフィアの仕掛ける巧妙な罠、ヒットマン達とのアクションシーン、そしてゴルゴ13に罠を仕掛けた者の末路……。是非とも本編を読んで頂きたい一本である。
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滝田 莞爾
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