この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第19巻収録。芸能界の大物・チャールズは、ライバルのジョニィの暗殺をゴルゴに依頼し、縄張りを奪うことに成功した。しかし、チャールズ専属の殺し屋・ビルは、チャールズが自分を使わずにゴルゴを使ったことが面白くない。ビルは自分がまだ第一線で活躍できることを証明するため、ゴルゴとの対決を決意するが……。脚本:K・元美津
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真正面からの襲撃は依頼人の希望か?
本話冒頭、チャールズの依頼でジョニイの殺害に赴くゴルゴだが、その殺し方は彼にしては珍しいものである。警官らしき姿に変装したゴルゴは、ジョニイが女といるホテルの部屋に堂々乗り込み、おののく彼を正面から拳銃で撃ち殺すのだ。
狙撃を本領とするゴルゴが、今回敢えてこのような殺し方を選択した理由は定かでないが、他の話では「命を狙っている旨を標的に知らせて震え上がらせたい」といった条件を受け入れているケースもあるので、依頼人と標的が芸能界のライバル同士であった今回も、そうしたやりとりがあった可能性は否定できない。
普通の人間と殺人機械の埋めがたい差
本話の主役といえる殺し屋のビル・マクダネルは、ベテランではあるがゴルゴのような超一流にはなりきれなかった男。後に追っ手を早撃ちで退けているところを見ると腕は確かなようだし、愛人の始末を命じられてちゃんと実行に移している点も流石に素人とは違うと言える。
が、それでも彼とゴルゴの間には人間と殺人機械の埋めがたい差があったようだ。雇い主のチャールズが、ゴルゴを「確かな奴」と称し、ビルはそうではないと言外に告げているのも、結局はそういうことだろう。嫉妬や葛藤といった人間らしい心は、この仕事では邪魔にしかならないのだ。
ビルの姿から逆説的に分かるゴルゴの強さ
愛人の始末を決行するものの、実は手元が狂って急所を外してしまっていたビル。そして、ゴルゴとの対決すらも叶わないまま、彼は警官の銃撃に倒れ、「おれは所詮……」と敗北を悟って息を引き取ることになる。
殺し屋が守るべき者など持つと弱くなってしまう、というのは古今東西の物語で使い古された常套句だが、ビルの末路やゴルゴの生き方にはこの言葉がピッタリ当てはまるようにも思う。ゴルゴは決まった恋人を持つことなど決してないし、ベッドを共にした女性でも必要なら撃ち殺すことを躊躇わない。これもゴルゴの強さの秘訣の一つなのだろう。
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東郷 嘉博
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