この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第11巻収録。フィリンピンで戦時中に暗躍した秘密結社・フク団とゴルゴの死闘を描く。ゴルゴはフク団のリーダー、レネ・ガルシアの暗殺を請け負っていたため、フク団は先手をうってゴルゴの命を狙う。終盤、ゴルゴの怒涛の反撃に恐れをなしたガルシアは、自ら罪を犯し刑務所のなかに逃げ込むが……。脚本:K・元美津
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60年代ゴルゴの良さを抽出
本作はゴルゴがみせる即席の変装や依頼のためならば口調も正す社交性の高さ、敵を待ち構える際の罠を工作するなど、初期ゴルゴでよくみられていた豊富な搦め手がみどころだ。
この頃のゴルゴシリーズは『マニトバ』で第1話『ビッグ・セイフ作戦』をオマージュするなど、60年代作品を意識したものが多い。本作もゴルゴ自身がメインで活躍する構成がみどころとなっている。随所に散りばめられたクレバーな戦術にニヤリと出来ること間違いなし。より洗練されたゴルゴを堪能できることだろう。
典型的な小悪党
登場人物で注目したいのは典型的な小悪党・コールだ。冒頭からゴルゴを狙撃するも外してしまい、初登場時のシーンがその言い訳に終始していてその情けなさは随一である。見てくれも髑髏を連想させるような顔立ちで、とても強敵には見えない。
予想を裏切らずゴルゴの車で跳ね飛ばされ生死不明のまま出番が終わるという小物っぷりを披露している。ただ冒頭の狙撃シーンは流石のゴルゴでも撃たれる前には反応できておらず、敵の腕が一流だったらどうなっていたかは分からない。コールのような小物があてがわれたのは『ロックフォードの野望 謀略の死角』でゴルゴが述べる“四割の運”だったのかもしれない。
ゴルゴとガルシアの駆け引き
本作の物語は行方の知れない標的・ガルシアと、彼を追うゴルゴの駆け引きを主軸に話が展開していく。ガルシアの一味は団結力が強く、ゴルゴに一泡吹かせる場面があったりと二人のパワーバランスの描き方が絶妙なのだ。みどころなのはガルシアの策略によりゴルゴが殺人の容疑者として警察に追われる中、バスルームにいるゴルゴが平然と警察を退けるシーンだ。
あの絶対絶命の状況からどうやって切り抜けたのか予想できる読者は少ないのではないか。ラストではガルシアが警察にわざと捕まり法の守りを得る。この策略をゴルゴが打破するシーンは痛快だ。どのようにガルシアの策略を破るのか、その方法を予想しながら読んでみてほしい。
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小摩木 佑輔
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