この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第8巻収録。ストーリーとしては麻薬組織のボス・ダディBがターゲットで、最後はブラジルの底なし沼で対決する物語。ゴルゴと船上で出会った娼婦・フィニーの人生に対する絶望・悲哀といったものが、よく描かれている作品でもある。ドンパチよりも人間ドラマとして秀逸な一編。
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初期ゴルゴからの脱却
初期作品のゴルゴは良くしゃべり、社交的ですらある。『バラと狼の倒錯』では握手すら交わすほどだ。例え銃撃を受けたとしても嘔吐ガスでやり過ごすなど無暗に人を殺さない、人間味のある男として描かれている。
しかし本作のゴルゴは口数も少なく追手は容赦なく撃ち殺す。少しずつだが機械的な後期ゴルゴの側面が頭角を現しつつある。そんな時系列を意識して読んでみてほしい。
しかし要所で発するゴルゴの台詞は的を射ているあたり、言葉の密度が上がったとも言える。言葉の重みを増したゴルゴを堪能出来る、後期ゴルゴの入門編として最適な作品に仕上がっているのだ。
みどころはフイニーの想いとダディBの罠
主要な登場人物はゴルゴに想いを寄せる売春婦フイニーと、本作のターゲットであるダディBだ。まずフイニーだが、例えば『Dr.V.ワルター』に登場するオルガは、ゴルゴへの想いと組織との板挟みにあっていた。
しかしフイニーは特定の組織に属しているわけではなく、彼女の純粋な想いがどのような結末となるのかがみどころといえる。
そしてダディBだが、当初はゴルゴを過小評価するなど典型的な小物臭を匂わせる。が、ゴルゴを待ち伏せる間、酒に手を伸ばす部下を「今夜は地酒はいけねえ!みんなだいじな仕事をのこしているんだ!」と諫めた上で飲ませてやるなど、懐を広さを見せる男なのだ。本作では上記二人に注目である。
舞台は密林!敢えて罠に飛び込むゴルゴ
本作の舞台はアマゾンだ。冒頭、密林を行く船上ではアマゾネス(凶暴な女戦士の集団)伝説を裏付けるように、女性同士の壮絶なキャットファイトが繰り広げられる。
闘いに敗れた女性は河に転落しピラニアの餌食となるわけだが、この事件によりピラニアの脅威が読者の胸に深く刻まれる仕掛けとなっている。
ピラニアの罠を仕掛けて待ち受けるダディBとそこに向かうゴルゴ。罠だと知らせるためにゴルゴに追いすがるフイニー。果たしてフイニーはゴルゴに罠と自身の想いを伝えることが出来るのか。ダディBの待ち構える三声の沼での決戦が最大のみどころだ。
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小摩木 佑輔
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