この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第1巻収録。“黄色いバラ”と呼ばれる謎のジゴロをめぐる物語。“黄色いバラ”は関係した女性との一部始終をVTRに録画するという性癖を持っており、これまでも大統領夫人や有名女優が被害に遭っていた。富豪のコルス・ロドリゲスは、その“黄色いバラ”に愛娘のミラーカを奪われ怒り心頭。ゴルゴを雇い“黄色いバラ”の抹殺を依頼する。謎の人物“黄色いバラ”の正体に仰天。
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ゴルゴがみせた社交性
ゴルゴ13シリーズの主人公・デューク東郷は寡黙でクール、愛想を振りまくなんてトンデモない、そんな印象を持っている読者も多いのではないか。
『天使と悪魔の腕』で言い放つ名台詞「利き腕を人にあずけるほど、俺は自信家じゃない……だから、握手という習慣も……俺にはない」からも分かるように、他人と握手をしないことでも有名だ。本作では彼が他人と握手をする貴重なシーンが掲載されている。
握手を求められるほどの神業を披露した銃種も独特で、依頼達成に不向きであろうショットガンによるクレー射撃である。普段の陰ながらの努力が『氷上の砦』でみせたショットガン狙撃をも成功に導いたのだろう。

謎多き黒幕、黄色いバラ
登場人物で注目したいのはゴルゴのターゲットでもある黒幕、黄色いバラだ。クライアントから男だと聞かされたゴルゴが待ち構えていると、そこに現れたのはどう見ても若い女性。
「では情報が誤りで黄色いバラは女性だったのではないか」と思いそうなものだが、そう単純な話にならないのがこのキャラクターの妙だ。本作は終始この黄色いバラを追い求めてゴルゴが奔走する話である。
最後の最後までゴルゴを以てしても正体を掴めないこの人物の悲しい秘密が明かされたときの読者の衝撃は計り知れない。黄色いバラの辿る数奇で物悲しい結末は刮目に値するだろう。
インパクト抜群の冒頭から始まる物語
炎天下の砂漠。服を脱ぎ棄てながら迫る美女。絡み合う男女。冒頭のインパクトは第1話『ビッグ・セイフ作戦』にも負けていない。本作のみどころはスパイ映画さながらの潜入、窮地に陥ってからの怒涛のアクションシーンだ。
ゴルゴお得意の変装と高い社交性を活かし情報収集をする緩い展開から一転、黒づくめのスパイスーツとガスマスク、更には嘔吐ガスを用いた工作などガチなアクションに一変する構成はさすが。
潜入の最中、窮地に陥るゴルゴが見せる体捌きも圧巻だ。危機的状況から部屋内を縦横無尽に飛び回り脱出するシーンは必見である。ゴルゴが最後まで読み違えた黒幕の正体を、読者なりに予想を立てて読むことで推理モノとしても楽しめるだろう。

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小摩木 佑輔

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