この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。米海軍の無人機オペレーターを務めるミシェルは、中東での作戦行動展開中に思いがけずゴルゴと接触。ゴルゴと一夜を共にしたミシェルは、彼ともう一度会いたいがためにNSAのデータベースに侵入するなど、常軌を逸した行動をとり始める…。脚本:夏緑
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男を救い、女の運命を変えた一匹の砂猫
中島みゆきの歌を思わせる幻想的なタイトルである。結婚を約した男に先立たれた女が世をはかなんで、夜の断崖絶壁から飛び降りる。真っ白な花嫁衣装に月光がきらめき、銀の翼のようだった、という話ではない。この美女はそのような、か弱い女ではなく、過激・危険・凶暴の3K花嫁である。
一匹の砂猫が、出会うはずもない男と女を結びつけ、女の運命を翻弄する。男女の関係をゲームに例えるなら、この2人は最初から互いに反則技の応酬である。それにしてもあのゴルゴが、女の指先一つで窮地に陥るとはテクノロジーの発達には目を見張る。
日本の中年男性はゴルゴに学ぶべし
「女が自分でブティックのドアをあけるものではない」このセリフを日本男性がさりげなく口にできるのはいつの日か。欧米では女性を大切にしないと子々孫々まで呪われると思っているのか、レディーファーストが徹底している。
作家の阿川弘之は、夫婦でヨーロッパを旅したときこの習慣にキレて、宿泊先で自室のドアを開けるやいなや「ここは大日本帝国だ!」と叫んだという。また、出会いの手法は、古典的だが有効なようで、テクノロジーが発達しても、人間の本質は案外変わらない。ゴルゴのさりげないファッションセンスもなかなかである。
ハートを撃ち抜かれ、微笑む銀翼の花嫁
「殺したいほど惚れたのに」という歌の文句のとおり、ストーカー化していくミシェルが哀しい。今までも『地獄のホバートレース』のエリスなどゴルゴに惚れた女は山といたが、皆、人生の不条理を知っていたから、彼を束縛できるとは思わなかった。
だが、美貌と才気に溢れ、全能感に満ちたミシェルは、そのプライドと仮想現実に支配される日常により、危険な妄想へ駆り立てられ、微笑みながら自滅する。ところで、いきなりメインディッシュを食べさせられた後、放置されたワトキンスが憐れでならない。デューク・東郷、罪作りな男である。
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野原 圭
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