この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。ゴルゴはある依頼でホテルの一室に滞在する標的を仕留める。が、狙撃の瞬間、ゴルゴのスコープに落下する赤ん坊が映り込む。赤ん坊はゴルゴのアドリブ狙撃によって救われたが、赤ん坊を放り投げた男に、狙撃の瞬間を目撃された恐れがあった……。
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無関係の命に救いを差し伸べるゴルゴ
依頼があればどんな者でも葬るが、逆に依頼と無関係の所で命を奪うのはよしとしないゴルゴ。本話での彼は、目の前で赤ん坊が窓から落ちるのを目撃し、即座に狙撃でバウンドを作り出してその命を救っている。
そして、赤ん坊を荷台に乗せていったトラックの行方を人を使って探す傍ら、赤ん坊を窓から落とした老人に接触し、「奇跡のゆくえ」を託すまでしているのだ。ゴルゴからすれば、無関係の転落事件など放っておいてもよかったはずだが……。金と手間を惜しまずここまでしてやるあたり、彼の普段見せない「人間味」が表れた一幕といえるだろう。
キング牧師の名を汚す卑劣なターゲット
「キング牧師の再来」といえば、本話の18年前の『ルーサー・キングの遺産』を思い出すが、奇しくも本話のイーガーも本物のキング牧師とは程遠い人物だったようだ。中国当局の傀儡のニセ牧師である彼は、黒人の子でありながら白い肌が発現した赤ん坊を「人種爆弾」と言い放ち、煙草を吹かしてニヤついているところをゴルゴに狙撃される。同情の余地もない末路である。
なお、本話で言及される孔子学院(作中では君子学園)は、現在のアメリカからはほぼ締め出されたものの、名前を変えて存続しているに過ぎないとの見方もあり(※)、脅威は未だ去っていないようだ……。
奴隷時代の「ファンタジー」は差別なのか
本話の依頼人、レストラン経営者のモンタナもまた、クセが強く印象的な人物だ。黒人差別者ではないと標榜しながら、黒人のウェイトレスに高給を払って奴隷時代のメイドを演じさせ、客にファンタジーを提供していると語る彼。現実に元ネタとなった店があるのか気になるが、本人も言うようにSNSでの炎上は不可避だろうから、フィクションに留めておくのが賢明か。
なお、黒人の両親から白人の子供が産まれるケースは実際にあり、その逆は映画『Skin』の題材ともなっている。これこそまさに、肌の色に関わらず人類が一つの種であることの証だろう。
※出典:ニューズウィーク日本版「中国共産党の『トロイの木馬』と言われる孔子学院はアメリカからほぼ姿を消した?」(2023年11月6日)
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東郷 嘉博
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