この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第196巻収録。クリープ試験で世界記録を樹立した大日新鉄鋼は、韓国・中国への技術漏洩に頭を悩ませていた。調査に乗り出した会長の藤井は、退職した部下・神取が漏洩源であると特定。そして神取が持ち出した情報には40年前に会社が隠蔽した“ある秘密”も含まれていた……。脚本:横溝邦彦
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命脈を握られた技術者の命懸けの依頼
本話の姿なきキーパーソンは、中国への技術漏洩の張本人と目された大日新鉄鋼の元社員・神取。金と女に溺れて会社を裏切ったと思われた彼だが、実は中国企業に嵌められ、娘の治療をダシに脅されていたことが判明する。
機密を守るため事故を装って自殺し、自身の生命保険でゴルゴに首謀者の抹殺を依頼していたという神取。本人の死後、テープでの依頼という異例のコンタクト方法だったようだが、ゴルゴも彼の命懸けの決意に感じ入るところがあったのかもしれない。彼の無念は晴らされ、藤井会長の誤解も解けたものの、切なさの残る幕引きである。

抜け目なく関係者を抱え込むゴルゴ
歌舞伎町で警官殺しの共犯として現行犯逮捕され、パトカーで連行されるという珍しい姿が見られる今回のゴルゴ。腕利きの弁護士を雇っていてすぐに釈放されたというが、恐らくは世界各地にそうしたお抱え弁護士がいるのだろう。
その後、事故に見せかけて襲ってくるトラックを難なく返り討ちにし、工場の機械を撃ち抜いて特殊合金の不正の証拠を消失させ、後日には首謀者の2名もしっかり始末。いつもながら鮮やかな手腕だが、主任の門間をいつの間にか引き込み、二重スパイの役を担わせるのは流石である。中国側への意趣返しだったのかもしれない。
低待遇からの技術流出は日本の宿痾か
本話では中国への技術流出に焦点が当てられているが、10年を経た現在でもその問題は依然としてあり、日本の工作機械が中国で核兵器の開発に使われている可能性すら危惧されるという(※)。
人材や技術の流出が絶えない理由は、ひとえに日本企業が技術者に十分な待遇を与えていないから、ということに尽きる。本話の神取も、熟練技術者の待遇改善を求めて退社時に会長と揉めており、会長も最後は技術者の定年延長を決意しているが……。彼自身が言うように、国ぐるみで根本的な対策を打ち出さない限り、今後も同様の悲劇は続きそうである。
※出典:日本経済新聞「中国が狙う工作機械などの先端技術 流出を防ぐには」(2023年11月26日)

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東郷 嘉博

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