この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第54巻収録。落ちぶれた日々を送るニックは、かつて一世を風靡した名ボクサー。ある日、愛している女性・エヴァがキューバ統一戦線党に乱暴される事件が発生。ニックは復讐に立ち上がる。一方、ゴルゴの標的となったキューバ統一戦線党の党首は、対抗措置として”ある男”を雇おうとする。
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二重依頼拒否はゴルゴの基本ルール
ゴルゴが依頼を受けるルールとして、相反する相手からの依頼は受けないことや先の契約が優先することなどがある。物語の冒頭でいわくありげな女からボディガードを頼まれたゴルゴは、「話したように……俺は、別な仕事を引き受けているのだ……… 両方の仕事はできない」とすげなく断っている。
「ゴルゴから守って」と懇願される珍場面
実は女がガードを依頼する男こそが今回のゴルゴのターゲットなのだが、それを知らない女が当のゴルゴに対して、「それもゴルゴ13という、世界でも超一流といわれているプロに、ね」と語る場面では、全ての読者が「志村ー、後ろ、後ろ」ならぬ、「そいつー、そいつがゴルゴ13ー」と言いたくなるだろう。なお、ゴルゴは黙して語らず葉巻に火をつけているものの、内心で「ふ、俺が超一流のプロか……当然だな」とニヤついている……かどうかは定かではない。
脇役としてのゴルゴを楽しむのも一興
もっとも本作におけるゴルゴは完全な脇役だ。本来の依頼人とやりとりする場面もなければゴルゴが狙う瞬間の描写もなく、ターゲットが射殺される瞬間は“ビシッ”と銃声が響いた後に窓ガラスとターゲットの額に続けて穴が開く描写のみ。物語のメインに据えられているのは、実力はあったものの何らかの理由でリングを降りてしまっていた元ボクサー、そして彼を慕う女性の二人。
ラストカットは「地の果てまで」と逃避行に赴く二人とゴルゴがすれ違い、「END」となる。本作と同様にゴルゴが目立たない話には、『天使の一滴』『アイリッシュ・パディーズ』などがある。いずれもゴルゴの狙撃によって本来は脇役となっている人達の航路が大きく変わってしまうのだが、彼らはそれに気づくことはなさそうだ。そんな縁の下の力持ち的なゴルゴの活躍も面白い。
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研 修治
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