この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第18巻収録。CG社の悪辣な方法による土地乗っ取りに業を煮やしたFAR(反乱武装集団)は、ゴルゴを雇いCG社の実力者アルベルト・ゴメスの抹殺を依頼する。ゴルゴが訪れると連絡員のペドロはすでに殺害されており、妻子が残されたままだった。ゴルゴは小屋に妻子の知らない馬がつながれていた事から、ある推理をするのだった……。脚本:岩沢克
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ゴルゴのルールすなわち美学
ゴルゴは世界で二人といない凄腕のスナイパーだ。彼への報酬は数十万ドルキャッシュで完全前金というのが定番である。だが彼は儲けるためにスナイパーをしているのではない。無報酬、あるいは格安の狙撃を請け負うこともある。ゴルゴはどんな相手とも握手をすることがなく、背を向けることもない。
そして彼にとっての裏切り者を許すことは絶対にない。裏切りが分かった瞬間、ゴルゴは銃口を裏切り者に向ける。他にも多くのルールがあるが、ゴルゴは例外をほとんど許さない。ルールを貫き、また依頼人にも守らせる姿にはプロとしての美学がある。

イレギュラーが際立つエピソード
この『白い巨人』という話を始めて読んだとき、正直に言って違和感を覚えた。なんと作中、ゴルゴは裏切り者を自分自身では殺さないのだ。裏切り者は依頼者の妻。彼女は決して悪人ではないが、ターゲットに脅され、スパイとなった。
ゴルゴの動向もターゲットに教えようとするが、ゴルゴは当然彼女の動向に気が付いていて一度は銃口を向けた。だが、その瞬間ゴルゴを神と慕う息子が二人の元に訪れ、ゴルゴは銃を下ろした。一般的なストーリーなら銃を下ろして当然だろう。子どもの前で母を殺すなんて大悪党のすることだ。だがこれはゴルゴ13だ。裏切り者にはゴルゴは容赦しないはずではないのか。
ゴルゴは子どもに優しい?
実はゴルゴが子どもに配慮を見せるシーンはこのエピソードだけではない。殺人マシーンと呼ばれることもあるほど、表情を見せることのないゴルゴ。そんな彼の奥底にある人情味に触れたような暖かい気持ちになるか、ゴルゴらしくないと内心嘆くか。ゴルゴファンならきっと両方の気持ちを持つのではないだろうか。私はそうだった。
ゴルゴは何百人と殺しているまごうことなき殺人者だ。だが、彼の生き方はストイックで美しい。だからフィクションでも彼にファンが多い。ああはなれないと思いながら強く憧れるし、彼のショットで不思議と読者の留飲も下がる。だからこそルールをいついかなる時も貫いてほしい、でも子どもの前で母が殺せるような機械であってほしくはない。一読者の自分がなぜか葛藤してしまうエピソードだ。

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大科 友美

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