この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第153巻収録。イラク侵攻への機運が高まり、石油利権をめぐって対立するアメリカとフランス。フランス政府は利権争いに不利となる証人・ザイダーンを抹殺すべく特殊部隊GIGNを送り込む。一方、ザイダーンは偶然、怪我をしたゴルゴを助け、その正体を知るや、迫りくるGIGNから守ってほしいと懇願する……。脚本:平良隆久
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瀕死の重傷を負ったゴルゴに迫る強敵
今回は瀕死の重傷を負ったゴルゴがその傷の癒える間なく老人と子供を含む素人とともに精鋭部隊に立ち向かう、最後までハラハラさせられる展開である。相も変わらず大国指導者たちの利権争いの醜さには辟易する。
政敵を追い落とすためには悪魔にさえ魂を売りそうな面々や国民として認められたいという、移民であるが故の忠誠心を利用し、同胞を敵味方に裂く。あげくに彼らをさらに裏切るという卑劣な仕打ちには怒りを禁じ得ない。そんな国が持つ精鋭中の精鋭部隊を満身創痍のゴルゴが3人の命の恩人とともに、決死の作戦で迎え撃つ。

精鋭部隊との息詰まる迫真の攻防
日本で城下町と言われる場所は例外なく、車の運転に苦労する。道は狭い、一方通行は多い、十字路は微妙にずれてクランクになっているからだ。これは敵に攻められたときのことを考えたからであり、京都の町がきれいな碁盤目になっているのとは対照的である。
ゴルゴも多数の敵を一人で迎え撃つために日本の城の守りを応用している。戦闘に際しての銃器や弾丸の貫通力などの解説も興味深い。勝負の分かれ目は、GIGNの隊長使用の銃がFR-F1であり、後継モデルのF2にはない弱点を見抜いたゴルゴと、隊長が捕らわれた成功体験にあった。
美しき国・フランスの光と影
ライはフランスを「お洒落で素敵な夢の国」と思っているが、それは商売上手のフランスが作ったイメージであり、多くの人はそんな風に思っているだろう。
フランス貴族と結婚し、長く現地に暮らした女優・岸恵子は「フランスは華もあれば毒もある、負け強い国」と表しているが、「恩を仇で返す」といったホワイトハウス内での会話や、サイダーンが語るアルジェリアへのフランスの仕打ちに、このことがよく現れている。そんなフランスから彼はアルジェリア同胞への謝罪を勝ち取った。これは彼にとってのラストグレートゲームとなったのである。

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野原 圭

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