この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。カナダ・トロントの空港の税関で、奇妙なジグソーパズルが職員の目に留まった。インド人によって持ち込まれたその白地のパズルには、“謎の文字”が書かれていた。一方ゴルゴは、インド西部の農村で大地主の狙撃を遂行したのだが……。
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世界が注目する大麻合法化の社会実験
税関で発見された奇妙なジグソーパズルを発端として、インドの麻薬組織を巡る人間ドラマが繰り広げられる本話。カナダの大麻合法化は壮大な社会実験と言われ、その成果が分かるのは10年、20年先のことだろう。作中で語られているように、合法化とは闇組織から飯の種を取り上げ、違法取引を根絶することである。
そのメリットの方が大きいとなれば、欧米諸国は追随するかもしれない。日本では2023年10月現在、医療用大麻の解禁に向けた法整備が進行中だが、併せて娯楽用大麻の厳罰化も盛り込まれており、カナダのような未来は当分訪れなさそうである。
いつになく饒舌なゴルゴの助け舟
大ゴマの多用など斬新なコマ割りが目立つ本話だが、依頼人とゴルゴの対話もユニークだ。ゴルゴへの接触を試みる度胸を持ちながら、どこか優柔不断で弱腰な気性を隠せないスニルに対し、いつになく饒舌に依頼内容を誘導してやるゴルゴ。彼の仕事ぶりを目の当たりにしたことが、スニルの「次にすべきこと」への決意の後押しになったのは間違いないだろう。
それにしても、命は奪われなかったものの、アンガディアの看板に泥を塗ることになったゴモランのその後が心配である。あの親方が身内に寛大ならいいが、ゴルゴにはそれも分かっているのだろうか……。
善悪の間から踏み出す決意をしたスニル
善悪の見方は立場によって変わるというのは、本作の一つの真理だが、本話はその狭間で揺れる若き検事・スニルの苦悩を主軸としている。麻薬という悪が教育という善を支えていることもあり、悪人と善人の境界は曖昧なもの……。勿論、殺人という手段で時には国家間の秩序や個人の救済に貢献しているゴルゴは、その真理を最も体現する存在だろう。
その境界に悩んでいたスニルが、ゴルゴとの接触を経て一皮剥け、大義のための悪事に手を染める生き方を決意するラストは印象的だ。彼がゴルゴの標的とならないことを、ゴルゴ自身も願ったかもしれない。
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東郷 嘉博
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