この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。アフリカ南部の国・ザンビアを訪れていたスイス人が、そこで振る舞われた地酒を飲んだ後、命を落としてしまう事件が発生する。酒には白人だけに害を及ぼす酵母が含まれていたためで、この事実を知った中国は酵母を利用した対白人兵器の開発に乗り出すが……。
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未知の酵母はコロナ陰謀説の暗喩か?
白人にだけ害を及ぼすという未知の酵母を巡り、中国当局の陰謀が描かれる本話。そうした酵母が実在するという話は聞かないが、本話が発表された頃は、新型コロナにまつわる様々な陰謀説が世を騒がせていた時期でもあり、それが暗喩的に取り入れられたエピソードとも考えられる。
なお、作中で言及される現生人類とネアンデルタール人の交雑は、DNA解析によってごく最近提唱され、2020年頃から一般でも盛んに取り沙汰されるようになった新説である。白人と有色人種の遺伝子の違いについて、早速この説を用いて説明しているのは実に本作らしい。
善良な人柄で命拾いした?高村
「酵母の情報が漏れる可能性の芽をすべて摘んでほしい」という依頼に対し、首謀者の中国人達はおろか、依頼人自ら秘密を漏らしてしまった友人さえも葬ったゴルゴ。一方で、村長から酵母を譲り受けた高村に対しては、容器を狙撃して酵母を使い物にならなくするだけで、命は取らずに済ませている。
依頼人のモノローグにあるように、「無用な殺しはしない」という彼のポリシーが表れた一幕だが、関係者を調べ上げ、この世から消すべき者と警告で済ませる者を峻別しているのは言うまでもないだろう。命拾いした高村の酒造の未来が明るいことを願いたい。
血塗れの世界と平和な世界の束の間の交錯
魅惑的な女性キャラが登場しては、儚く散ってゆくのも本作の醍醐味の一つだが、本話の小暮玲奈こと翠蘭も死ぬには惜しいキャラだった。ハグ以上の色仕掛けには及ばないものの、高村に迫る際の「私の舌を使って!」という台詞はそそるものがある。サービスカットが下着姿だけなのは勿体ない……。
かたや、高村の酒造には、本命(?)らしき佳津美ちゃんという女性もおり、従業員以上・奥さん候補未満のような彼女とのドラマも気になるところだ。ゴルゴが住む血と硝煙の世界の裏に、『蔵の宿』のような物語の世界もあると思うと面白いではないか。
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東郷 嘉博
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