この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第109巻収録。ボクシング世界チャンプのメンデスは、アメリカへ密入国した過去を持つ。その際、弟のホセを見捨ててしまったことへの、罪の意識に苦しんできた。そんななか、国民解放軍に参加していたホセが、政府軍の凶弾に倒れてしまう。メンデスはホセの仇・ガルシア将軍への復讐を決意するが……。脚本:風巻龍平
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現在に至るメキシコの混乱
本作に登場するEZLN(メキシコ・サパティスタ民族解放軍)は現在も活動している組織だ。ただし、作中で触れられているように1994年のNAFTA(北米自由貿易協定)発効時における武装蜂起で大きく痛手を被った後は、差別の排除や民主化の推進などを中心とした対話路線に舵を切っており、現在の組織が運営するサイト(スペイン語)も見ることができる。
もっともそれまでに死亡した人も多い。メインに描かれているボクシングウェルター級世界チャンピオンのアルベルト・メンデスの弟も武装蜂起でメキシコ政府軍に殺されたとの設定になっている。
瞬時に弱点を見抜くゴルゴの目
本作でゴルゴの依頼人となるアルベルト。しかし依頼の前に二人は2度接触している。ロードワーク中のゴルゴに背後からアルベルトが近づくのだが、その後の展開は想像できるだろう。1回目の接触ではゴルゴの手刀を皮一枚かすらせたアルベルトが身構えたところ、「失礼した」とゴルゴは謝罪して走り去る。
2回目の接触ではアルベルトは意図的にゴルゴに近付く。今度はゴルゴの手刀を完全にかわしたアルベルトだが、直後の右足蹴りに反応が遅れる。ゴルゴは、「左眼に異常があるようだな」と言い置いて走り去る。この観察力の鋭さこそゴルゴの真骨頂だ。
一発で決めるゴルゴのスナイプ
「私が犯した許されざる罪を償い、そして私のささやかな誇りを守るために」と語ったアルベルトが具体的にどんな依頼をしたのかは描かれていない。しかしラストシーンは弟の仇とも言えるメキシコ政府軍のガルシア将軍の頭とアルベルト自身の左眼を一発で撃ち抜いている。
二人が倒れた方向から判断するにアルベルトの後頭部から左眼、そしてガルシア将軍の頭を撃ち抜いたらしい。贖罪としてゴルゴに自分を殺させる依頼人は『ハインリッヒの法則』などでも登場する。依頼人の考えはそれなりに理解できるものの、どこかやるせない思いが湧いてくる。
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研 修治
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