この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第110巻収録。かつては“冷血キャサリン”と呼ばれ恐れられていた彼女だが、ある爆弾事故が原因で過激なテロ行為に疑問を抱くようになっていた。そんな中、キャサリンをライバル視する工作員パメラは、彼女を挑発するように爆弾テロを繰り返していた。パメラの暴走を止めるべくゴルゴを呼び寄せるキャサリンだったが……。
スポンサーリンク
女を通じてゴルゴの感情も垣間見える一編
『ゴルゴ13』史上屈指の感傷的な物語として知られる本話。ヒロインのキャサリンには、10年前にゴルゴと行動を共にし、男女の仲になっていたという過去があった。「二度三度つづけて味わえる女は……そうざらにはいない」(『飢餓共和国』)という信条を持つゴルゴが、10年越しとはいえ同じ女性を二度抱いているのは珍しい。
本話の彼はいつになく饒舌でもあり、「“冷血”と呼ばれたお前が……ずいぶんと感傷的な物言いだな……」という一言には、それこそ並の女性には見せることのない彼自身のセンチメンタルが込められているようでもある。
「ゴルゴの子」を産んだ女の悲しい物語
『黒い瞳 EBONY EYES』に続き、ゴルゴの落とし子の存在が示唆される本話。作中で確証が示されたわけではないが、「ジョーイはね、あなたと同じ黒い髪、それにとび色の瞳を持っていたの……」というキャサリンの言葉と、その後の二人の表情が「答え」だろう。
「冷血キャサリン」が「臆病キャサリン」に変貌してしまったのも、その息子を事故で亡くしたことが切っ掛けだというから、彼女がいかに本気でゴルゴに惚れていたかがわかる。もし生きていれば、彼女は息子を自分やゴルゴと同じ世界の住人として育てただろうか、それとも……。
キャサリンの死にゴルゴの思いは……
ゴルゴの本領である狙撃の腕も存分に発揮される本話。キャサリンに誘導された標的をカーテン越しに狙撃するという当初の計画は、彼にはさしたる難題でもなかっただろうが、実際のアクシデントへの対応が凄い。
室内に発砲の閃光が見え、窓に弾痕が穿たれたその一瞬で、ゴルゴはキャサリンが撃たれたことを察し、閃光と弾痕から標的の位置を割り出して正確に眉間を撃ち抜いているのである。その後、全てを見届け、受信機を放り捨てて立ち去るゴルゴの表情が趣深い。死と硝煙に彩られた彼の人生に、キャサリンは僅かにでも感傷を残していったのだろうか。
この作品が読める書籍はこちら
東郷 嘉博
最新記事 by 東郷 嘉博 (全て見る)
- ゴルゴ13:第536話『神の鉄槌』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第552話『受難の帰日』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第535話『森と湖の国の銃』のみどころ - 2024年9月19日