この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第214巻収録。インフラ整備のために中国との外交強化をはかるミャンマー。だが政府が絶大な信頼を置く女預言者スイ・スイは、その政策に異を唱える。大臣秘書のトゥンは、スイ・スイが日本と結託しウソの予言をしていると推理。スイ・スイ抹殺へと動くが……。
世にも不思議な動物が背負う国の命運
実は猛獣なのにパンダは文句なく可愛い。動物に好き嫌いはあると思うが、パンダを嫌いな人はいないだろう。だからWWF・世界自然基金のロゴにも使われているし、通勤電車内にパンダの映像を流したら、殺伐とした雰囲気が和むのではないかとも思う。
もしあの色構成が逆で目の隈取りがつり上がっていたら「怖い」と恐れられただろうに、自然界のなせる業は不思議である。そしてその生育地が中国だけなのだから、かの国において、おそらく「パンダ様」は外交カードのエースであり、その生育を担う人々は命がけと言っても過言ではないだろう。
もしも未来がすべて見通せたなら
パンダの名前はリンリン、シャンシャンなど同音の響きが多い、が、今回登場するスイスイは、パンダではなく未来に起きることを見事に言い当てる女性予言師である。もしも自分の未来がすべて見通せたら、どんなに素晴らしいかと思うかもしれない。失敗もなく危険も回避できる。
しかし、そうなると退屈になり、生きているのがいやになるだろう。未来がわからないから、期待に胸をふくらませることもあり、失敗があるから喜びもある。ある宗教家は「失敗のない人生は大失敗です」とも言っている。人間とは、つくづくわがままな生き物である。
ゴルゴは女の予知能力を信じていたのか
パンダ外交、というからには中国がメインの話と思ったが、民主化後のミャンマーの政治事情が主題であった。トゥンの依頼に対し「俺の仕事の中で最も楽な仕事になるかもしれないな」というゴルゴのセリフが意味深である。国を愛するトゥンの考え方は民主主義に沿っている。
スイスイは、自分に不利益をもたらすトゥンを、あえて重用するよう進言し、結果的にミャンマーは、真の愛国者を失うことになる。スイスイが予知できなかったのは、ゴルゴの銃弾の行方だけだった。それとも彼女は、そのことをも予知してあの化粧を施していたのだろうか。
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野原 圭
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