この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第23巻収録。平蔵の従兄・仙右衛門が、料理茶屋の女中・お勝と結婚したいと言い出した。お勝に釈然としないものを感じた平蔵は、小柳と五郎蔵に身性を探るよう命じる……。第六巻『むかしの男』に登場した霧の七郎が再び登場。五郎蔵が盗賊になった経緯も明かされる読みごたえのある一編。
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老いらくの恋の相手を見定める
現代では五十歳を過ぎての恋愛も珍しいものではないだろうが、江戸時代ではどうだったか。本作できっかけとなるのは、平蔵のいとこにあたる三沢仙右衛門(みさわせんえもん)が王子権現社の門前にある料理茶屋「山吹屋」の女中に惹かれたこと。
巣鴨村の大百姓である三沢仙右衛門に平蔵はちょくちょく世話になっているだけでなく、『霧の七郎』では息子の辰蔵までもが二十六両もの大金を借りている。
「仙殿も元気な証拠」と言った平蔵は、「お勝という女しだいでは俺は仙殿の味方になるやもしれぬぞ」と様子を見に行く。腰の軽さは平蔵ならではだろう。
昔の女達から起こる事件
お勝の巧みな身のこなしに不審を覚えた平蔵が、小柳と五郎蔵に探索を頼んだことで物語は展開していく。
結果として三沢仙右衛門宅に盗賊が押し入るのは防いだものの、五郎蔵にとって悲劇的な結末につながってしまう。万事丸く収まるのは難しい。
本作以外にも、『むかしの女』では平蔵が本所の鬼銕(ほんじょのおにてつ)と呼ばれていたころに関係した女が元となる事件が起こり、『馴馬の三蔵』では小房の粂八かつて関係した女が世話になっていた盗賊仲間がきっかけとなる事件が描かれている。いずれも悲劇的な結末で、男女関係の難しさがつくづく理解できる。
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両親を亡くした兄弟の行く末
兄の仇討ちで平蔵を狙った霧の七郎。その最後は一騎打ちになった五郎蔵に首を突かれて絶命する。これにより『本所・桜屋敷』から始まった霧の七郎の仇討ちは遂げられぬまま終結を迎える。
悪党の逆恨みながら、『霧の七郎』で描かれた兄弟愛を知っている読者の中には割り切れない思いを抱える人もいそうだ。
本作に限らず、親を亡くした子供が盗賊になる展開は度々描かれている。『血頭の丹兵衛』では粂八も、「両親の顔も知らねえということは、人間の生活の中になに一つ無えという事でして」と語っている。この辺りは現代でも似たものがありそうだ。
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研 修治
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