この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第29巻収録。本格の盗賊・愛川栄次郎が刀で襲われた。男は栄次郎を「親の敵」だと叫ぶ。目撃した左馬之助から報告を受けた平蔵は、栄次郎と面識のある舟形の宗平をつかって探りをいれる。事件の裏には栄次郎が助ばたらきを頼んだ、河津の伝八一味の裏切りがあった……。平蔵、左馬之助が浪人に扮して一味に潜入する。
河原での言い争い
蛍合戦の美しい河原に響く叫び声を聞く左馬之助。どうやら火盗改メの密偵と名乗る男が、今まさに相手に刺殺された場面だった。盗賊の掟として密偵、つまりお上の狗に成り下がった人間は生かしておけないのだ。
盗賊が絡む争いが起こっている事を左馬之助から告げられた鬼平は、もちろん捜査に乗り出す。ところが調べが進むにつれ、何やらおかしな雰囲気に気づく一同。どうやら盗賊同士での抜け駆けが行われている様子だ。
裏切り行為によって、美味しい所だけを頂戴してしまおうという悪だくみに巻き込まれた形が見えてくるぞ。本格の盗賊、愛川の栄次郎に助け舟を出したのは我らが本所の鬼銕だった。
富山の薬売り
“越中、富山の反魂丹~”の掛け声と共に現れた薬売りこそが盗賊どもの繋ぎ役だったのだ。反魂といっても死者が生き返る訳ではなく、腹痛や吐き気、整腸剤としても重宝された丸薬だ。江戸時代の反魂丹は龍脳という成分が入っていたようだが、龍脳はあまりにも高価なはず。
今ならばクスノキから採れる樟脳を還元して作るが、江戸時代に還元技術はあったのだろうか。龍脳の香りは樟脳と似ているので、清々しい香りの反魂丹が人気だった事も頷けるな。そして携行用の丸薬入れとして持ち歩いたのが印籠。印籠の中には薬を詰めていて、まさに旅のお供だった訳だ。
裏切り者には天誅を
義によって栄次郎を助太刀する鬼平並びに密偵たち。本格の盗賊には仏心を持つ鬼平も、兇賊には容赦が無い。まさに兇賊を殲滅させる心構えを見せつける鬼平は、いつにも増して素晴らしいぞ。そして自らを裏切り、仲間を次々と死に追いやった者には相応しい最期が待っている。
しかしいかに本格とは言えども、お仕置きを受ける立場である事には変わらないのだ。お仕置きを甘んじて受ける覚悟がある栄次郎の心持ちも流石だな。こうした心があるからこそ、鬼平も本格には仏心を持つのだろう。
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滝田 莞爾
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