この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第214巻収録。アリゾナ州のとある高層ビルで、飛び降り自殺志願の男が出現する。一方、ビル下のカフェにはゴルゴの姿があった。お抱えの情報屋を呼び出し、いくつかの指示を与えるゴルゴ。一体、ゴルゴの目的は何なのか? 終盤で種明かしがある読者参加型の推理短編。脚本:ながいみちのり
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絶望のどん底から歓喜の頂上へ
禍福はあざなえる縄のごとし、とはまさしくこのことだろう。ビルの屋上に立つのは、風に吹かれた颯爽とした男、ではなく、どうしようもなく情けなく気弱だが、家族思いの心優しい男である。そしてゴルゴの狙撃が最後の1ピースとなり、バラバラのジグソーパズルのような出来事の理由が判明する、というストーリー面白さを堪能する作品である。
読み終わってから、もう一度最初のゴルゴの登場シーンを見返すと「……」の無言のセリフが「まいった、な」というつぶやきであることが理解でき、そこからが、日頃のネットワークの出番となる。
世間を困らすお騒がせ男の共通点
万国共通よくある話だ。自殺願望がある人で、ひっそり死なずに世間を騒がせるのは、基本的に誰かに話を聞いてもらいたい、できれば死にたくない、止めて欲しい、という願望もある。ただ、この男も自覚しているように「話したところで俺がバカだと言われるだけだ」というような事情を抱える場合も多い。
映画『男はつらいよ』に、寅さんの名言がある。うつ病で自殺しそこなった男に対し「死にはぐっちまったな。なに、またやりゃあいいよ」といって、相手の言動や行動を否定せず受け入れている。フーテンの寅は名カウンセラーかもしれない。
2人の男の明暗を分けたミッション
結果的にビルの男は無事救済され刑事部長が市長となる夢はついえた。2人ともその理由を知らないが、これが人生のアヤ、というものではないだろうか。今回ゴルゴの狙撃難易度は低く、どれくらいの依頼料だったのか不明だが、あれだけの人員を動員させ、もしかすると赤字になってしまったかもしれない。
しかし、どれほど困難なアクシデントが起きても言い訳せずにしかるべき手を打ち、ミッションを遂行するのが最上級のプロであり、だからこそ顧客の信頼を勝ち得るのだ。でも、困ったオジサンたちはくれぐれもビルの男の真似をしないように。
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野原 圭
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