この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第60巻収録。CIAからの依頼でブタペストに潜入したゴルゴは、現地で落ち合うはずだったCIA職員が、秘密警察に捕まったことを知る。ゴルゴはターゲットである秘密警察長官・フォックスが用心深い男であり、滅多に外出をしないことを逆手にとって、ある作戦に打って出るが……。脚本:北鏡太
スポンサーリンク
現在は博物館となっている「恐怖の館」
第1巻『色あせた紋章』、第4巻『魔笛のシュツカ』に続き三度目の登場となるハンガリー秘密警察。その残虐性で国民を震え上がらせたこの秘密警察は、公式には1956年のハンガリー動乱を経て廃止されているが、本作ではその脅威は未だ健在という設定である。
なお、アンドラシー通りに所在した秘密警察の本部庁舎は、2002年から博物館として公開されており、その名もずばり「恐怖の館」。恐怖政治の象徴である矢十字党の制服や、犠牲者の写真、監獄や拷問部屋の展示もあるので、渡航の機会があればその恐ろしさを堪能してみるのもいいだろう。
難度の高いミスショットが二度も炸裂
本話ではハンガリーを舞台にゴルゴの策略が冴え渡るが、中でも注目は序盤の検問所のシーン。飲んだくれ警官達をハッタリ一つで震え上がらせる機転と度胸も凄いが、一人をわざと射殺し損ねるのが後の布石となっているのには唸らされる。
ゴルゴは続けて副首相の狙撃失敗を演出し、最終的に標的のフォック長官を誘い出すことに成功する。一話で二回も失敗の演技をしているゴルゴだが、警官の側頭部に軽傷を負わせるにとどめたり、副首相のメガネだけを撃ち抜いたりと、ヘッドショットより余程難しそうな芸当を難なくこなしてみせるのは流石の一言。
勝敗を分けた升田教授のハクキンカイロ
本話で重要な役割を果たす升田教授の懐炉。本話の5年前の1978年には、使い捨てカイロ「ホカロン」が発売されヒット商品となっているが、教授が愛用しているのは昔ながらの金属製のハクキンカイロだ。
実は、これらはいずれも日本人の発明。海外では馴染みが薄いのか、空港の入国審査で「これは?」と訊かれているシーンが印象的だ。本話のクライマックスでは、教授から譲り受けた懐炉を利用してゴルゴが寒冷地での銃撃戦を見事に制してみせるが、日本にルーツを持つとも言われる彼が、自ら懐炉を用意していなかった理由はちょっと謎である。
この作品が読める書籍はこちら
東郷 嘉博
最新記事 by 東郷 嘉博 (全て見る)
- ゴルゴ13:第536話『神の鉄槌』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第552話『受難の帰日』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第535話『森と湖の国の銃』のみどころ - 2024年9月19日