この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第71巻収録。科学者のハミルトンは、簡単な原理かつローコストで北極の氷山を運搬できる装置を開発した。その発明を慢性的な水不足に悩むエジプト政府が買い、一大プロジェクト「氷山輸送計画」がスタートする。エジプトに水不足を解消されると困るアメリカ政府はゴルゴに計画の壊滅を依頼する……。脚本:安達謙太郎
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氷が贅沢品だった時代
冷蔵庫が当たり前の現代では庶民も真夏に氷を口にすることができる。しかしかつては一部の人々に許された贅沢だった。清少納言の枕草子には削り氷(けずりひ)と呼ばれるものが登場。江戸時代には氷献上(こおりけんじょう)として加賀藩(今の石川県)から徳川将軍家に天然氷が届けられていた。
北極や南極から氷を運ぼうとする計画は、これまでに何度も立てられている。ただし費用がかかり過ぎたり、国際情勢が問題になったりと上手く行くことは少ない。本作では北極の氷山を運ぼうとするエジプト政府の計画をCIAが察知してゴルゴに依頼している。
30年間も大統領で居続けること
2019年11月20日、安倍総理が明治の内閣発足以来、歴代最長となる2887日の在任期間を迎えた。もっとも世界を見回せば、さらに長い在任期間となる首脳がたくさん存在する。本作に登場するエジプトのムバラク大統領もその一人。1981年に大統領となって以降、アラブの春で失脚する2011年まで約30年もの間大統領の椅子に座り続けた。
本作の発表は1986年。エジプトは西側との友好関係を維持しつつも、ソ連やアラブ諸国との関係を修復しつつあった。当時のムバラク大統領は、自身の最後に苦境を迎えることを想像していただろうか。
北極海での大胆な狙撃
CIAがゴルゴに依頼した内容は不明ながら、後のゴルゴの行動からすると氷山輸送計画の阻止だけでなく、関係者の殺害も含むと考えられる。そこでゴルゴが選んだ狙撃方法は、バズーカ砲による氷山自体の破壊だ。随分強引ながら、見物人もいない北極海の洋上では思い切った手段を実行できる。
『燃える氷塊』『ガリンペイロ』などでもバズーカ砲やロケットランチャーを使っているゴルゴ。ゴムボートで現場を離れると、ラストシーンでは迎えらしきヘリを見上げている。「久々にスカッとした狙撃だったなあ」と思い起こしているのかもしれない。
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研 修治
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