この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第13巻収録。昨今の盗賊どもの汚い手口を詰る粂八、彦十、五郎蔵、宗平の密偵たちが、「盗めの手本を見せてやろうぜ!」と意気投合。密偵たちが悪名高い金貸し医者・竹村玄洞を、ギャフンと言わせる痛快エピソード。
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密偵たちの腕がうずく
この密偵たちの宴は個人的には好きなエピソードトップ3に入る。鬼平犯科帳は原作だけでなく劇画やテレビドラマ版もあるせいか、広いネット上でも各話の感想を細かく見ることは少ないように感じる。
ただ、この『密偵たちの宴』は割合感想を見かけやすいように思う。それだけ鬼平の密偵ファンが多いのだろう。元本格盗めの盗賊、現密偵の彼らにとって、畜生盗めがはびこる今の世の中は我慢ならないものだった。
自分たちの本格盗めの腕を知らしめようと酒の席で盛り上がったのが発端になって、話が動き始める。計画を立てているときの全員のまなざしは妙に燃え盛っていて、感情の高ぶりが伝わってくる。
すべてを見通す鬼平の目力
密偵たちの悪ふざけは結果的にひとつの畜生盗めを止めることになった。急ぎ盗を気が付いた発端が自分たちの盗みの計画だっただけに、平蔵と向き合う密偵たちはどこか歯切れも悪い。
何かに気が付いたように平蔵が五郎蔵と舟形の宗平をじっと見つめるが、まるでふたりだけでなく自分も無言で問い詰められているようでそわそわしてしまう。劇画版では平蔵の眼力の強さが鮮やかだ。眼だけですべてを語ることも少なくない。優し気に丸く笑みをたたえることももちろんあるが、やはり鋭い眼光あってこその鬼平という気持ちもある。
ただ、さいとう氏の代表作としてゴルゴ13があるが、同じように鋭いと表現するにしても、ゴルゴの眼と鬼平の眼は明らかに違う。平蔵はどんなに悪党と対峙した時でもどこかに人間味がある。
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実はおまさが要の回
この密偵たちの宴でひとり盗めに参加しなかったのがおまさだ。むしろおまさは新年会で本格盗めがしたいと盛り上がる男たちを頭から叱りつけている。
そんなおまさが最後に平蔵から瓢箪徳利を渡されるのはその時の心境を思えば少し可哀想な気がするが、普段温厚なおまさが怒ってやけ酒をするのは正直面白みがある。瓢箪徳利を抱えて茶碗酒をがぶ飲みする様子には、つい笑わずにはいられない。
平蔵本人が密偵たちに何かしらの行動を起こすよりもストーリーの印象も深くなっただろう。おまさの叱咤と、すさまじい怒りとが話を引き締めている。最後のコマ、男たちのしょんぼりした背中ととぼけた顔の犬がなんとも滑稽だ。
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大科 友美
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