この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第25巻収録。平蔵に「ぜひとも密偵として使いたい」と熱望させた男・墨つぼの孫八が登場。引退を前に、跡目に考えている名瀬の宇兵衛に”ある提案”をする孫八だったが……。墨つぼの孫八と大滝の五郎蔵が、酒を酌み交わす場面がシブい。
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腕の良い大工が盗賊になったわけ
題名にある“墨つぼ”とは大工道具の1つで、墨を染み込ませた糸を使うことで長い直線を引いたり、腕の良い大工であれば巧みに曲線も描いたりできる道具だ。
『泥鰌の和助始末』『男の隠れ家』など、大工が出自の盗賊や現役の大工が盗賊一味に組する話は多い。ただし墨つぼの孫八が盗賊になったのは酒や博打などで身を持ち崩したのではなく、急ぎ働きの盗賊に親兄弟を殺された敵討ちが原因だ。
そんな孫八のことよく知らないままに平蔵は、「大工あがり」と表現している。そこで「大工くずれ」と言わなかったのは平蔵の勘が働いたのだろうか。
本格の盗賊頭のあっけない最後
おまさが褒めちぎるほどに本格の盗賊として名を売っていた墨つぼの孫八。「大した度量の男だ」と五郎蔵が言い、「盗賊にしておくには惜しい」と彦十も感嘆している。
「今は亡き馬蕗の利平冶の再来やもしれぬ」と平蔵も密偵仲間に誘うことを考えていた。しかし跡目を譲ろうとした名瀬の宇兵衛の裏切りに合って、宇兵衛と浪人に切り殺されてしまう。
『老盗の夢』で相打ちとなった蓑火の喜之助、『浅草・鳥越橋』で手下に殺された傘山の瀬兵衛など、本格の盗賊でも無事に隠居できなかった者は多い。少し離れた部屋で平蔵達が控えていただけになおさら惜しい。
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頼りになる小柳夫婦は京の空
役宅に戻った平蔵。前作の『隠居金七百両』で妹のお園と一緒に京都に送ったことを忘れて、「小柳を呼べ」とつい言ってしまう。
その晩に泊りだった木村と細川を呼んだところ、「小柳さんが居ないと何かとご不自由なようで」と木村にもからかわれる始末。腕も立ち、性格も真面目、しかも義弟とあっては小柳を頼りにするのも当然だ。
本作の最後の場面では、平蔵とお園の父である宣雄が眠る京都の華光寺にお参りし、墓を前に手を合わせる二人を描いている。亡くなった孫八の遺骨を納めに行くついでに両親の墓参りを命じられる木村とは雲泥の差だ。
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研 修治
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