この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第47巻収録。道を歩いている人の髷を、いつのまにか切り落とすという妖怪・髪切虫が出現した。幕閣有力者の親族にまで被害がひろがるに至り、京極備前守より直々に捜査指令をうける平蔵。事件の裏には盗賊・浦安の治衛門の隠し金にまつわる、ある計画が隠されていた……。
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髷があってこそ一人前
表題の「髪切虫(かみきりむし)」とは、こっそり髷(まげ)を切ってしまう妖怪の名前で、作中に描かれている通り江戸界隈に度々出没したとのこと。
実際には人間の仕業と思われるものの、髷を切られた方にとっては人間であっても妖怪であってもたまったものではない。『金太郎蕎麦』でも押し込み強盗に入られた若旦那が髷を切られてほっかむりをせざるを得ない状況になっている。
本作では旗本の息子までもが被害にあったことから、通常は管轄外となるはずの火盗改にまでねじ込まれたのが発端だ。さすがに武士が髷を切られたのでは立つ瀬がないだろう。
四季折々の鍋料理を味わう
「市中の治安を守るが役目なれば早速に動きましょう」と言った平蔵。木村達にもハッパをかけた後か前かは分からないが、いつものように彦十や粂八らに相談を持ちかけている。
その場で彼らが囲んでいるのは軍鶏鍋だ。鳥肉を口に運んだ平蔵は、「お前たちと突く軍鶏の味は、格別だ!」と微笑んでいる。
『夜鷹殺し』などでも登場する軍鶏鍋は鬼平シリーズの定番ながら、『浅草・鳥越橋』にはあんこう鍋、『男の毒』には猪鍋といろんな鍋料理が登場する。気の合った仲間達と酒を飲みながら突く鍋であれば、普段は“鬼”と呼ばれる平蔵の顔がゆるむのも当然か。
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犯人を無罪放免にする平蔵
瓦版屋に変装したおまさや盗人仲間を見つけた粂八らの活躍によって、髪切虫の騒動が人目を遠ざけたい盗人の仕業と分かったことで、事件は解決する。
ただし髪切虫の犯人が一人でなかったのが物語の肝となっている。騒動に便乗して浮気の相手となった女の髷を切った犯人である髪結の女房。
平蔵は自首してきた女房を横に浮気をした夫を叱りつけた後、「髪結が髪を切っただけだ……別に不都合はねえわ、な」と女房を無罪放免している。女房のお腹に赤ん坊がいたためでもあったからだろう。時として粋なお裁きを下す平蔵ならではの機転の利いた一言だ。
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研 修治
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