この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第9巻収録。火盗改方の勘定掛同心・川村弥助は、地震がくると失禁してしまうほどの小心者。その川村の妻・さとが無残にも殺されてしまう。川村は下手人捕縛に立ち合わせてほしいと直訴するが……。幕閣からの事件もみ消しの要請に、平蔵が出した答えとは?
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眼の色が変わるのが見てとれる劇画版
泣き味噌屋とは火付盗賊改方に勤める勘定掛同心、川村弥助のあだ名だ。川村は優秀な勘定掛として平蔵が認めるほどの男だったが、気が尋常でないほど小さいのが玉に瑕。
そんな川村の妻が浪人から殺害されてしまう。序盤、川村の眼はいかにも堅実そうではあるが、見るからにおどおどとした立ち居振る舞いで気の小ささが伝わってくる。しかし妻女を殺害され、数日泣き暮らすと自ら平蔵に捕り物に加わることを志願し、最後には妻の仇を討つ。
平蔵に召し取りを願い出るときのまなざし、そして仇敵をひたとにらみつける様は序盤と人が変わる。もちろん原作でもこの様は目に浮かぶような描写で書かれるのだが、劇画で絵として見ると変化により息をのむ。
同心たちは意地が悪い?
この泣き味噌屋という不名誉なあだ名をつけたのは実は木村忠吾だという。川村は体格だけは立派なので、他にも「役立たずの相撲の看板」だの「ふわふわ饅頭」だのと陰口を叩かれている。いくら最前線の実働部隊ではなく事務方とはいえ、仲間に対して少しひどい言い様ではないかなと感じる。
確かに火付盗賊改方の同心たちは日々悪党と対峙する覚悟を持てるほど肝が据わっているし、剣の腕にも覚えがある者が多い。身も心も強い人間だという自負が強いだろう。
それが目の前に川村のようなおどおどした人間がいるとつい八つ当たりのように意地の悪いことを言ってしまうのかもしれない。それにしても褒められたことではないのだが。作中でも忠吾は小柳同心から「一本饂飩屋」と呼ばれ、たしなめられている。
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愛する人ができると男は変わる?
川村と、今回殺害された川村の妻さとは新婚だった。川村はさとに慕われ、川村もさとの背に平蔵が言っていたという自分への評価を心中で語り掛け、自分を鼓舞する。
この回に限らず、妻を娶ることで働きぶりや生活、人格まで変わる男性が鬼平犯科帳には多くいる。反対に男女関係に溺れて取り返しがつかなくなってしまう男性も多く出てくるものの、どちらにせよ恋愛や結婚が人生の大きな要素であることが伺える。
劇画版では相思相愛にある女性が漢を見るまなざしは総じてどこまでも明るく、暖かい。確かにこのまなざしをずっと受けていれば生活に張り合いもでるだろうと感じる。
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大科 友美
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