この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第163巻収録。通常兵器で実戦使用が可能とされる小型核兵器が開発された。開発者のアドレ博士は国際テロ組織のハバスと結託し、世界規模の核兵器テロを画策。一方、CIAからテロ阻止の依頼を受けたゴルゴを監視する謎の男……。アドレを崇拝する天才ハッカー・李の監視をゴルゴはどう振り切るのか? 脚本:熊坂俊太郎
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現実化する小型核爆弾の脅威
核爆弾が小型化したら世界は想像を絶する事態を迎えるだろう。そんな爆弾を開発し、テロリストのハバスと組んで武器市場を独占しようとするアドレ。彼の気持ちが理解できない。金銭欲も支配欲も満たされるだろうが、世界が核で汚れてしまったら水も空気も食べ物も、ブルックスのいうように億単位の年月で汚染される。
そんな世界に生きていたい人間がいるだろうか。5600マイル離れた2つの標的を同時に狙撃するという前代未聞のダブルミッションを即座に承諾したゴルゴだが、遂行は果たして可能なのか。アドレの種明かしが全てを語る。

この男の辞書に「時差ボケ」はない
今回ブルックスが依頼した場所はスイスのコテージであり、山々や木造コテージの描画が美しい。もしかしたらゴルゴは貴重な休暇中だったのではないだろうか。「螺旋」などで対決しているジャヌー警部もまさかゴルゴがスイスで休暇を過ごしているとは思いもよらないだろう。灯台もと暗しである。
旅行代理店内で女性エージェントと接触した歳、彼女が作業後のディスクを素手でバリッと割った瞬間の、ゴルゴが見せる驚きの表情が珍しい。その直後、5600マイル移動のハードなミッションを開始するのだが、休養十分の彼に時差ボケはない。
デジタル依存社会の意外な盲点
PART-14「チェス盤の駒」というタイトルが皮肉である。李達はチェスのごとくゴルゴを追いつめていくつもりだが、つき合う気のないゴルゴは無数のキングの駒でチェス盤を埋め尽くして攪乱する。アドレが「うるさい、警報を止めろ!」とキレる場面には爆笑する。
冒頭、タイスの秘書ローザとジョンソンのいわくありげな雰囲気が結末を暗示する。ローザは目で「最近冷たいじゃないの」と訴え、ジョンソンは「まいったな、気軽に手をだしたが本気になられちゃかなわない」と思っていた。デジタル社会も綻びは「感情」から生じるのであった。

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野原 圭

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