この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第126巻収録。反政府ゲリラ「真実のイスラム」を殲滅するためエジプトの貧しい村・ズール村を目指していたゴルゴ。古物商に扮して潜入したゴルゴだが、案内役のガイドとのトラブルから負傷した上、サハラ砂漠に投げ出されてしまう。水はおろか武器も食料もないまま砂漠を彷徨うゴルゴ。はたして生き抜きことは可能なのか……? 脚本:国分康一
スポンサーリンク
広大無辺な砂漠に眠る歴史
広大な砂漠が灼熱の太陽に焼けるかと思えば、満天の星空の下、零下に冷え切る様子が克明に描かれている。わずかな情けが自らを危機に陥れてしまったゴルゴ。生き延びるための必死の形相から、放射冷却、などという表現では間に合わないすさまじいまでの温度差や、無音と死の恐怖が伝わってくる。
さらにエジプト古代遺跡の詳細な描写など、迫力に満ちた作画に圧倒される。今回のゴルゴのミッションは一体何か。ズール村の秘伝である砂漠の下の遺跡を発見する手法から、大学に通うルシアの近代的な手法まで、遺跡発掘のノウハウも興味深い。

物言わぬ砂漠はゴルゴの天敵
『白竜昇り立つ』など厳しい自然はゴルゴにとって難敵だが、中でも最大の敵は砂漠であり、再三危ない目に遭っている。理由は何といっても寒暖の差と水不足だ。どんなに鍛えても水がなければ生きられない。『カタールの剣』でもゴルゴは死にかけているが、そのときはラクダの血を飲んで助かっている。
今回はおそらく砂漠のキツネ・フェネックと思われる動物に命を救われた。フェネックもめったに見かけない珍しい動物がいると思って近づいてきたのだろう。動物は意外に好奇心が旺盛だ。それが仇となったのだがこれも運命だからしかたない。
元をたどれば貧困に行き着く
貧困な村を出てジョセルの反政府軍についたアジャ、娘ルシアを利用して盗掘を続ける村長セシム、ゴルゴに銃を向けたムハマド、皆、原因は貧困である。古代の秘宝を求めて豊かな国の人間たちは莫大な資金を提供する。金は人を狂わすというが、ルシアのいうとおり古代の遺品は人類全体の貴重な遺産である。
『縄文の火』に登場する但馬やアランのように、それを投機の対象にすることを許してしまう人の心の歪みは、ゴルゴの銃弾でも消し去ることはできない。スフィンクスは欲に取り付かれた哀れな人間どもの所業をあざ笑っていることだろう。

この作品が読める書籍はこちら

野原 圭

最新記事 by 野原 圭 (全て見る)
- ゴルゴ13:増刊第100話『獣の爪を折れ』のみどころ - 2024年8月18日
- ゴルゴ13:第485話『欲望の輪廻転生』のみどころ - 2024年7月30日
- ゴルゴ13:第520話『未病』のみどころ - 2024年7月29日