この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第167巻収録。日本の地方大学で海洋生物の研究に携わる唐沢教授が、中国人の組織に拉致される。唐沢が書いたズワイガニの論文に、未来の貴重なエネルギー資源「メタンハイドレート」採掘の鍵が隠されていたのだった。国益を守るため、日本政府は唐沢の奪還をゴルゴに依頼するが……。
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「何で私がこんな目に」さえない教授の悲鳴
「これは悪夢だ。夢よ早くさめてくれ」唐沢教授は遠く離れた中国の実験室で、何度この言葉を口にしただろう。数日前まではのんびりした地方大学のキャンパス内で「俺もそろそろ定年だし津山君に就職先か良い青年を紹介して仕事は終わる。彼女は男の子に関心がなさそうだが……」などと考えていたかもしれない。
そんな彼が命がけで守った良心はどんな学者も遠く及ばない。そして『神の手』のように専門家のプライドを針でチクチクつつくようなゴルゴの悪魔的人使いは相変わらずで、その成果により見事ピンポイントの狙撃を成功させる。
ズワイガニが日本のエネルギー危機を救う
やっぱり茹で立てを三杯酢で、お酒は辛口の司牡丹だな、いえいえ、レモンをかけて白ワインのシャブリが一番、ノンノン、極上のホワイトソースを用意しなければ……「ズワイガニ」と聞いて凡人が連想するのはせいぜいこんなところだろうが、さすがに学者というのは目のつけどころが違う。
この情報が漏れたら、ズワイガニが一斉に乱獲されて、大変な事態を招いてしまいかねない。それほどすごい発見だった。海の底でうごめいているズワイガニ君たちにとっては、危うく受難の憂き目にあうところだったなどとは預かり知らないことだろうが。
予想外のラストには同情のため息
日本と中国を舞台に展開したこの話は、なんとニューヨークの教会でピリオドを打つ。この結末は予想外だったが、現実はもっとすさまじい策謀が、あちらこちらでうごめいているのだろう。ここでもキーワードは「ズワイガニ」であった。
研究の秘密は守られたものの、命がけの遺志は受け継がれることなく、非業の死を遂げた可哀想な唐沢教授だが、真相を知らずに亡くなったのがせめてもの救いだったかもしれない。「お人好しの幸運の天使だと思っていたら実は疫病神だった」とつぶやいている人物に、その言葉を包んでそのままお返ししたい。
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野原 圭
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