この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第85巻収録。リノのホテルでカジノ強盗が発生。自分のシマを荒らされたネバダの顔役・デカーロは、実行犯とその黒幕の始末をゴルゴに依頼する。黒幕の意外な正体にギャップを楽しめる一編。ラストは久々の早撃ち対決。ゴルゴを前に「町の射撃大会で優勝した」などと自慢する黒幕が微笑ましい。脚本:K・元美津
スポンサーリンク
ゴルゴの人物像に深みを持たせる意欲作
読者の皆さんはゴルゴの人物像についてどのような印象を持っているだろうか。記念すべき第一話『ビッグ・セイフ作戦』では冒頭から有名な“あのルール”を侵害するものには女だろうと鉄拳制裁、常軌を逸した信念を持つ男としてキャラクターを確立した。また『飢餓共和国』では任務を達成するためならば子供であろうと容赦なく殺す、そんな冷徹なプロとしても描かれている。
上記から冷たく、人間味のない男と思われがちだ。そんなゴルゴが先に述べたポリシー、ルールを侵害されなかったとき、どのような立ち振る舞いをするのか、本作品では彼の普段の人物像の一端を垣間見ることが出来るだろう。
親子の家族愛、意外な黒幕
この作品ではほとんどの場面でゴルゴは脇役として描かれている。では主役は誰かというとモーテル経営をする母娘とそこに帰ってきた息子だ。彼らはゴルゴのような超人的な能力を持っているわけではない。しかし、彼らにはゴルゴにない「家族」という重要なファクターを持っている。
その家族のゴルゴへの接し方、客としてのゴルゴの物静かなリアクション、(ゴルゴが時折見せる。人間味のある一面が好きというファンも多い。)そんな落ち着いたやりとりが本作品のみどころのひとつだ。ゴルゴシリーズの中でも「家族」というゴルゴにない目線から描かれる本作品はシリーズにおける一服の清涼剤と言えるだろう。そしてその家族に悲劇をもたらした誰もが予想できない黒幕、その意外な人物に度肝を抜かれること間違いなしだ。
ゴルゴ「以外」が織りなす悲劇に注目!
本作品のストーリーは視覚障害をもつ母とその兄妹の深い「家族愛」による悲劇がみどころとなっている。視覚障害と言えば『南仏海岸』に登場するイクシオンもゴルゴを超える能力持っていることで有名だ。視覚障害繋がりのこの母も例に漏れず一般人よりも優れた感覚を有している。この優れた感覚をきっかけに徐々にストーリーの雲行きが怪しくなっていくのだ。母として、息子としてそれぞれを思うが故の行動の末、それらが本作品の悲劇へとつながっていくのがやるせない。
そしてこの悲劇の末に娘がついた「嘘」もまた、読者の心を掴んで離さない。この「嘘」とその後の家族の姿で涙腺の緩い方は涙ぐむハズだ。そして本作品で見逃せないのがラストの展開、それまで脇役に徹していたゴルゴがこの悲劇の諸悪の根源と対峙する場面である。ゴルゴと黒幕の対決方法、その結末に前述の家族に感情移入していればしているほどスカっとすること間違いなしの一品だ。
この作品が読める書籍はこちら
小摩木 佑輔
最新記事 by 小摩木 佑輔 (全て見る)
- ゴルゴ13:第22話『Dr.V.ワルター』のみどころ - 2022年1月13日
- ゴルゴ13:第32話『帰って来た標的』のみどころ - 2022年1月7日
- ゴルゴ13:第29話『価値なき値』のみどころ - 2022年1月1日