この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第112巻収録。泥沼化するボスニア・ヘルツェゴビナ民族紛争。クロアチア人の天才的スナイパー、アンドリッチは、妊娠中の妻を失った悲しみから、冷酷非情な殺人マシーンと化していた。しかし憎しみは憎しみしか生まないことを知っていたアンドリッチは、親友のセルビア人・シカティックに自らの裁きを依頼するのだった……。脚本:ながいみちのり
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紛争真っ只中での出来事
タイトルは東ヨーロッパのボスニア・ヘルツェゴビナに実在する通りの名前。正式名称は“Zmaja od Bosne Street”で、日本語にすれば“ボスニアの竜通り”くらいとなる。
ここが戦場になったのは1992年。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の一環で、スルプスカ共和国とユーゴスラビア人民軍により、首都サラエボ一帯が包囲されたため。1996年に停戦となるまで1万人以上が死亡、約5万人が負傷したとのこと。本作が発表された1994年8月は国際連合の警告などにより紛争のピークは過ぎていたものの、包囲が継続していた時期だ。
クロアチアの鷲VSゴルゴ
本作に登場するスナイパーは、“クロアチアの鷲”の異名を持つすご腕。冒頭ではるかに離れた男性の胸を撃ち抜いた後、「まさかあの婆さんをっ」と仲間が言った人影すら躊躇なく撃っている。
その後の回想で彼の使っている銃が、形式は不明ながらもモーゼルであることが描かれている。名銃であるのは間違いないものの、さすがに時代がかった銃だ。そこから一転、ゴルゴの依頼シーンが挿入され、セルビア軍に所属する男性からクロアチアの鷲への狙撃依頼が行われる。ゴルゴファンなら「さあ名手の対決だ」と思うだろう。しかし意外な結末へと進んでいる。
あっけないゴルゴの一撃
通りを挟んでクロアチアの鷲とゴルゴは向かい合うものの、ゴルゴの放った銃弾がクロアチアの鷲の眉間を貫いて終わる。最後のページに描かれたのは泣き崩れる依頼者と去っていくゴルゴの背中のみ。なぜそうなったのかは本作を読んで欲しいところだが、簡単に言えば自殺だ。
ただし、クロアチアの鷲と依頼人との関係、さらに依頼人がゴルゴに頼んだ理由など複雑な状況が絡んで、誰しも救われない悲劇となっている。ゴルゴに自らを狙わせるのは『パンドラの柩』『ハインリッヒの法則』などがある。悲劇となることがほとんどなのは言うまでもない。
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研 修治
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