この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第78巻収録。ソ連が誇るボリショイ・バレエ団。プリンシパルを努めるナタリアは、文化省の意向により米国のバレエ団と共演することになる。演目「ジゼル」のパートナーがかつての恋人で、アメリカに亡命したミハイルだと知ったナタリアは、思い悩んだ末、自らも亡命することを決意する。
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ソビエトから亡命したバレエダンサー
1981年に発表された名作映画『愛と哀しみのボレロ』には、ソビエトから亡命するバレエダンサーが登場する。そのモデルは1961年にソビエトから亡命したルドルフ・ヌレエフとされている。本作でもソビエトから亡命したダンサーであるミハイル・レシオフスキーが登場する。
その名前と彼の所属が架空の団体であるABC(アメリカン・バレー・センター)となっているところから推測すると、1976年にソビエトから亡命し、その後にアメリカン・バレエ・シアター(ABT)に所属したミハイル・バリシニコフがモデルだろう。
わずか8年間の大きな違い
バリシニコフが亡命したのは1974年。作中でレシオフスキーが亡命したのは6年前としていることから、発表された1988年の6年前であれば1982年となる。わずか8年ながらも、当時のソビエトが大きく変わったことを知っている人は多いはず。
ガチガチの冷戦時代だった70年代を過ぎ、80年代に入るとソビエト経済の崩壊が明らかになり、1985年にゴルバチョフ書記長がペレストロイカを推進している。ただし、作中でナゴルノ・カラバフ戦争のニュースを取り入れるなど、まだまだ混乱が続いている状況を巧みに取り入れているのはさすがだ。
目的を果たす精緻な狙撃
ゴルゴが狙撃するのはボリショイ・バレエに所属するナタリア・パブロワ。ただし殺してしまうのではなく、ハイヒールのかかとを狙撃して怪我をさせるのが目的だ。その意味では『ルート95』のように怪我に留めた狙撃もあるが、バイオリンの絃を狙った『G線上の狙撃』も思い出す。
ここで見逃せないのは、ヒールを撃たれて石段を落ちそうになったナタリアを見張り役の男がしっかり受け止めていること。石段を転げ落ちれば大けがどころか死んでいても不思議ではない。ゴルゴは見張り役の方にきっちり転がるようヒールを狙い撃った、とは考えすぎだろうか。
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研 修治
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