この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第36巻収録。左馬之助、粂八、彦十を引き連れて花見に訪れた平蔵。会場で平蔵と左馬之助は、ある人物を目撃する。それは高杉道場時代の先輩・井上惣助だった。しかし井上は二十余年前、切腹して果てたはずだった……。
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品川湾から御殿山の花見
四季折々の描写から始まることの多い本作。本作で平蔵は岸井左馬之助らとともに船を出して花見を楽しんでいる。
御殿山(現在の東京都品川区北品川辺り)は江戸時代には桜の名所として知られていた場所で、葛飾北斎の「富嶽三十六景 東海道御殿山ノ不二」、歌川広重の「御殿山花見」、一立斎広重の「東都名所 御殿山花見」など度々画題になっている。
もっとも明治以降になって開発が進んだため、今ではビル街や高級住宅地に様変わりした。それでも毎年「御殿山さくらまつり」が開催される御殿山トラストシティなど往時をしのばせる場所も残っている。
まだまだ青かった平蔵
そんな御殿山で平蔵や左馬之助が見知った顔に出会ったことから事件が始まる。ここで平蔵と左馬之助の若かりしころの回想が描かれるのだが、「平蔵も若いな」と思ってしまう内容だ。
「二十歳を迎えたばかり」の平蔵や左馬之助。剣の腕前こそ“竜虎”と呼ばれるまでに上がったものの、精神面の成長は今一つだったらしい。
ただし師匠である高杉銀平の言葉を素直に受け入れた所を見ると、それなりに成長した様子も読み取れる。さらにその後の御前試合の結果や加賀藩との騒動を耳にして平蔵も左馬之助も一段と成長したのかもしれない。
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最後の一瞬だけの幸せ
平蔵達が旧知の人間と勘違いしていた井上惣七。稲谷の仙右衛門一味を裏切って恩人の家を守ろうとしたものの、わずかに気をそらした隙を突かれて首領の仙右衛門に切られてしまう。
盗賊から恩人をかばっての死。しかも平蔵の目の前で殺されてしまう残酷な展開は『霜夜』の池田又四郎とほぼ同じ。もっとも仮に生きのびたとしても、盗賊として犯行を重ねた身の上では獄門は逃れられない。
平蔵が、「唐丸駕籠で運ばれるより、いっそ潔い最後かもしれぬ」と言うのも無理はない。畳の上で親族に見守られて亡くなっただけ幸せだったのかもしれない。
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研 修治
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