この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第77巻収録。小さなモーテルに一人の女性記者がやってきた。7年前にマフィアから足を洗い消息を絶った、ドン・バローネの独占取材に訪れたという。同じく、組織を裏切ったドン・バローネを始末するために雇われた殺し屋も暗躍。ドン・バローネはどこにいるのか? その正体とは……? 脚本:沖吾郎
スポンサーリンク
過去を背負う人間は誰なのか
このエピソードはページ数も長くなく、世界を揺るがすようなテロや陰謀も出てこない。ゴルゴの登場シーンも少ない。ドラマティックなシーンもエロティックなシーンもほとんどない。それでも妙に心に残る。それは登場人物たちの背景を読者が深く、広く想像できるエピソードだからではないだろうか。
田舎の小さなモーテルのオーナー、共にモーテルを切り盛りする娘、調子のいい若者、モーテルに入り浸るうだつの上がらない地元の小男、オーナーの葬儀で現れた陰のある男。そのうちの何人かは過去があり、正体がある。しかしその過去や正体の詳細なエピソードはここでは語られない。

言外の人間ドラマに酔う
田舎モーテルのマスターは7年前に組織を抜けたビッグドンなる大マフィアだった。それだけでなく、調子がいい若者は大マフィアを狙うヒットマン、陰のある男は大マフィアの腹心だった。しかしこのエピソードの中で、彼らの過去や正体はこの肩書だけでしか語られない。
実際にどんなマフィアだったのか、なぜマフィアを抜けたのか、ヒットマンの過去の仕事、娘は父がマフィアであったことを知っているのか……。すべて読者の想像に委ねられている。そのドラマを詳細に描いてもらいたい、読みたいという欲求もあるが、敢えて読者に委ねられたと思えばそれも心地よい。
ゴルゴの仕事は正確だったか
ゴルゴへの依頼は、腕利きのスナイパーである“左ききのジョー”を他のマフィアに取られる前に始末してくれ、というものだったという。ゴルゴはジョーの左腕を打ち抜き、依頼を完遂したことを告げると去っていく。依頼内容は左ききのジョーが他の組織で仕事ができないように始末してほしいというものだった。
ゴルゴは彼の左腕が再起不能になればいい、命までは取る必要が無いと解釈したという。ただ、ゴルゴは他のエピソードでは始末してほしいと言われればだいたい殺している。もちろん会話の文脈で依頼人が殺害を望んでいるのは判るのだが。依頼人がよほどゴルゴに対して礼の無い相手だったか、あるいはビッグドンの葬儀でゴルゴに何か感じるところがあったのか。それも作中で語られることは無い。

この作品が読める書籍はこちら

大科 友美

最新記事 by 大科 友美 (全て見る)
- ゴルゴ13:第435話『地上の太陽』のみどころ - 2024年7月28日
- ゴルゴ13:第429話『真のベルリン市民』のみどころ - 2024年7月21日
- ゴルゴ13:増刊第73話『ピンヘッド・シュート』のみどころ - 2024年4月24日