この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第10巻に収録。平蔵配下の同心・沢田小平次の剣の師匠・松尾喜兵衛が何者かに惨殺された。平蔵は、野見の勝平一味に雇われた凄腕の浪人・石坂太四郎が犯人だとあたりをつける。勝平一味の押し込みの現場を包囲した平蔵は、沢田小平次と石坂太四郎の一騎討ちの場をセッティングする。
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剣術に長けた同心
猛者揃いの火盗改メ同心においても圧倒的な剣術の腕を誇るのが本作の主役、沢田小平治だ。沢田は小野派一刀流の免許皆伝という腕前だけあって、沢田が登場する『じゃんこ』『稲荷町』などのストーリーにおいても、剣術を軸に話が進む事が多いぞ。
剣術の話となれば当然、派手なアクションシーンも伴うので同心の中でも人気が高いのも頷けるな。本作は沢田の師匠である松尾喜兵衛が惨殺され、憤怒の念に駆られる同門の子弟たちと同心の身分を持つ沢田の心理描写をもしっかりと描写されている。登場する剣客たちの複雑な心理だけではなく、アクションシーンも見ものの作品に仕上がっているぞ。
剣術の流派
松尾喜兵衛を遺恨から殺害した剣客石坂太四郎は、よもや剣客としての心持ちもなく盗賊の用心棒として火盗改メに包囲される。自身の腕前に相当の自信を持つ石坂は名乗りを上げ、鬼平と万年橋にて一騎打ちの流れに持ち込むのだ。この時、鬼平は石坂の構え方から石坂の流派が“念流”である事を見抜く。鬼平犯科帳には様々な剣術の流派が登場するのだが、特に意識しておくと楽しめるのが一刀流と念流だろう。
一刀流は鬼平や左馬之助が修めた流派、念流は辰蔵が修行をしている流派だ。辰蔵が修行をしている坪井道場は当然、念流の道場という事になる。坪井道場が舞台のストーリーは多数あるが同じく念流の達人、上杉周太郎のエピソードは『霧の七郎』『二人女房』などで押さえておくと更に剣術についての広がりがあるのでお勧めだ。
小野派一刀流と念流の立ち合い
鬼平と対峙した石坂太四郎、お互いに一進一退の攻防を展開するところからも、相当の遣い手である事が分かるぞ。少なくとも一刀流の免許皆伝、達人である鬼平に劣る事のない剣技を持つとは凄い腕前だな。実力伯仲の剣客同士の対峙では、時間の経過が非常に遅くなると噂される。万年橋の上で剣を構えた両者の間には、永遠ともいえるほどに長い時間が経過していたのだろう。
そこに到着したのが小野派一刀流の沢田だ。鬼平は沢田に立ち会いを引き継がせ、沢田と石坂の一騎打ちへ。鬼平を以てして剣術に関しては自らより上と言わしめるほどの実力者、沢田。小野派一刀流と念流の剣客、全てを賭した一撃はどちらに軍配が上がるのか。緊張感漂うアクションシーンもぜひ体感して欲しい作品だ。
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滝田 莞爾
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