この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第14巻収録。平蔵に対して自分の似顔絵を送って寄こすという”味なまね”をした盗賊・雨引の文五郎。その文五郎を偶然見かけた平蔵は尾行を開始するが、その先で文五郎が刃物で襲われる。老盗・西尾の長兵衛の跡目争いの渦中にいる文五郎に、平蔵はある司法取引を提案するが……。
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雨引文五の名札
「人を殺さず、女を犯さず、貧しきものからは盗まず」
この掟に従って盗み働きをする“本格”、雨引の文五郎の盗みは見事である。二～三十両の銭を颯爽と盗み去り、隙間風の異名を取る描写はきっと魅力的に感じられるぞ。
そんな文五郎が悪人態の彦蔵なる輩に襲われる一度目の戦いは鬼平が割って入る。文五郎は逃げ仰せ、彦蔵は火盗改に連行されるのだが……。そう、二度目の戦いに向かって鬼平の妙策が光るのである。
鬼平の妙策
拷問にも口を割らない彦蔵は、仲間を売らないってぇ所は根性が座っている。鬼平の策はその上を行き彦蔵を泳がす事になる訳だが、彦蔵が狙うは西尾の長兵衛の跡目、そして邪魔な文五郎の命と、短絡的な悪党らしさが光って良いぞ。
鬼平が悪党の心理を読み取ったが故の妙策は成功して二度目の戦いへと。手練の彦蔵と対峙しての、文五郎の立ち回りには一見の価値ありだ。
何故、文五郎は自らの素性を明かしてまでも火盗改に捕縛されたいと願ったのか……ストーリーは急展開を迎えるのである。おりんと秀次の若い二人の葛藤、それを支える文五郎の心意気には揺り動かされる事まちがいないぞ。
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本格と外道の対比が素晴らしい
自らの欲の為だけに盗みを働くだけの外道と、義侠心を持った本格との対比が良く描かれているぞ。これぞ本格の盗っ人！と思える台詞や仕草が堪らなく男心をくすぐるではないか。
男気と人情に溢れる文五郎、人を纏め信頼を得る為の術がそこにはある。どれだけ陳腐な台詞を並べようとも、文五郎が若い二人と手下たちに掛ける愛情を見れば一気に吹っ飛んでしまうぞ。
鬼平、本格、外道、この三者の複雑な心理描写が光るストーリーだ。文五郎、おりん、秀治、手下たちの行く末はいかに……本格の生き様を堪能したいのであれば、ぜひとも本編を読んで頂きたい。
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滝田 莞爾
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