この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第5巻収録。京に到着した平蔵と忠吾。別行動をとった忠吾はナンパした京女・お豊とわりない関係に。しかし、このお豊、平蔵とはただならぬ因縁をもつ女だった!平蔵、二十代のころの大失態が描かれる興味深いエピソード。
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妖艶とは妖しく艶やかと書く
20余年前平蔵と男女の関係となった女盗。年月を経ながらも美しさはむしろ増し、同心木村忠吾と関係を持ったことから話が動き出す。妖艶とはよく言ったもので、ただ美しいだけでなくこの世のものでないような妖しい艶やかさを持っていて初めて使える言葉だ。
今回登場する女盗お豊はまさに妖艶と呼ぶにふさわしい。原作でもお豊の美しさ、妖しさは伝わってきたが、劇画版はまた一味違う。
若かりし頃のお豊も、40を超えてからのお豊も顔の造詣だけでなく目元あたりから匂い立つような色気を感じさせる。三白眼の女は好き物と書いた作家がいたが、お豊の三白眼は男を誘う香気が確かに立ち上っている。
京の情景が郷愁を誘う
劇画版鬼平犯科帳では場面転換で街角の何気ない風景がカットインされる。京都は平蔵が青年時代を過ごした思い出の街なのもあってか、普段よりも風景のカットインが多い。
特に話半ばでは月と山に薄雲、夕日の名残の山の端、月明かりと家々の明かりに照らされる街並みの遠景と逆光の寺塔と2ページも割かれている。平蔵にとって京は懐かしくも苦い思い出が残る街だろう。
なにげない情景からも呼び覚まさせられる記憶があることは間違いない。人の姿の無い情景の向こうを想像すると、平蔵の郷愁を少しだけだがともに味わうことが出来るような気になる。
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最期に微笑むことができるほどの魔性
お豊は白州に座らせられるときもすっと背筋が伸びている。隣でそんな女ではない、何かの間違いだと必死に奉行に訴えかける大店の旦那に、馬鹿にするでもなく、心を動かされるでもなく、ただ微笑んで「かんにんしとくれやっしゃ、旦那はん……」と告げるお豊は可愛らしくすらある。
白州から牢へと戻される途中、平蔵とお豊は再会を果たす。平蔵を見て心底誰だか判らないというふうな表情を浮かべるお豊もまだ美しい。
お豊自身も自分が死罪を免れないと思っているはずだ。そのなかでもまだ美しくいられるのはまさに魔性だし、絵で見ると原作以上にお豊の恐ろしさが伝わってくる。
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大科 友美
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